米控訴裁判所、Anthropic への国防総省制裁の仮停止を却下
米控訴裁判所が、Anthropic に対する国防総省の「供給チェーン危機」指定を一時的に停止する請求を却下。Anthropic の法的戦いは加速化し、複数の法廷で相反する判断が下されている。
米ワシントンD.C.の連邦控訴裁判所は9日、AI企業 Anthropic に対する国防総省の「供給チェーン危機」指定を一時的に停止する請求を却下した。この決定は、AI企業に対する国家安全保障に基づく措置として初めての公式指定となり、米国のAI規制政策の方向性を示す重要な判断である。
国防総省による制裁の背景
Pete Hegseth 国防長官は、Anthropic が自社のAI アシスタント Claude に対する使用制限を撤廃することを拒否したことを理由に、同社を供給チェーン危機リストに追加した。制限を撤廃すべき利用法には、監視システムや自律型兵器システムが含まれるとされている。
Anthropic は、この拒否を AI 安全性の原則に基づいた決定として説明している。曖昧な文言により、米国民の大量監視や自律型兵器開発に Claude が悪用される可能性があるとの懸念から、強い制限を維持する立場を取っていた。
相反する法廷判断
今回の控訴裁判所による却下の決定は、別の訴訟で San Francisco の連邦地裁が下した判決と相反している。Rita Lin 判事は3月下旬、政府が Anthropic を危機リストに追加する際に権限を超えたと判示し、制裁指定の解除を命じていた。
同判事は「First Amendment(表現の自由)への報復」だと主張し、Anthropic の立場を支持していた。しかし今回、ワシントンの控訴裁は一時的に San Francisco の判断の執行を停止したため、国防総省による制裁は引き続き有効なままとなっている。
法的戦いの長期化
Anthropic は、この指定が First Amendment による表現の自由を侵害し、第五修正条項の適正手続きを違反していると主張して複数の訴訟を展開している。同社は声明で、「最終的には法廷が供給チェーン危機指定は違法だと判断することに確信している」と述べ、さらなる法的闘争を予告している。
国防総省から見れば、AI 企業による倫理的制限を強制することは国家安全保障上の脅威と考える可能性があり、トランプ政権はこの裁判所判決を「重要な勝利」と位置付けている。
AI産業への影響
この事案は、米国の AI 企業が政府圧力と倫理的原則の間でどのように立ち位置を決めるかという問題をグローバルに投げかけている。Anthropic が制裁を受けた初めての大手 AI 企業となったことで、他の AI 企業や開発者も、政府要求への対応方針を再検討する可能性がある。