インドでは今、AIが教育と科学の現場をつなぎ直す動きが加速しています。最先端のAIモデルを教室や研究室で実証し、農業やエネルギーといった社会課題にも応用しようという挑戦です。ここでは注目すべき4つの潮流をわかりやすく紹介します。

1. 国際協調とインドの戦略

DeepMindはNational Partnerships for AIを通じて、各国と協力しながら最先端AIへのアクセスを広げています。ここでいう「frontier AI」は、大規模で高度な能力を持つAIモデルを指します。インドは政府と企業、研究機関を結びつけることで、教育や公的サービスにAIを統合する戦略を進めています。

今週はインドが第四回グローバルAIサミットを主催し、国際協調やポストAI時代の社会設計を議論する場になりました。外交や政策の新たなモデルを示す可能性もあります。

2. 教育と研究の接続――ANRF連携の現場

ANRF(AI研究振興財団)との協力で、Google系の組織はAIモデルを研究現場へ広めています。ハッカソンやメンタリング、研修を通じて学生や若手研究者の育成を後押ししています。こうした支援は、研究と教育の橋渡し役になります。

教育現場では、Geminiなどのツールの利用が進んでいます。Ipsosの調査では「学び」がAI導入の最大の動機と出ています。LucknowのCity Montessori Schoolでは、算数授業にGuided Learningを導入し好意的な反応が得られました。Fab AIの早期のランダム化対照試験では、学生が対話的な説明を求める傾向が見え、現場のニーズが明確になっています。

Experience AIはRaspberry Pi Foundationと協力し、AIリテラシー教育を広げてきました。これまでに約30万人の学生と8,000人の教師に到達しています。小さな実践の積み重ねが、将来の技術人材の基盤を作ります。

3. 創薬と分子研究でのAI活用(AlphaFold/AlphaGenome)

AlphaFoldはタンパク質の立体構造を高精度で予測するツールです。インドでは約18万人の研究者が活用しており、世界でも上位の利用者数です。AlphaGenomeなどの追加ツールが普及すれば、創薬や分子生物学、生物材料研究のスピードがさらに上がるでしょう。

AIは、研究者の「第2の目」として複雑な構造の予測や仮説検証を助けます。これにより、小さな発見が大きな応用につながる可能性が広がります。

4. 再生可能エネルギー予測の精度向上(WeatherNext×OCF)

WeatherNextとOpen Climate Fix(OCF)の統合は、再エネ予測の精度を高める取り組みです。OCFの風力予測統合で精度が最大8%向上した例もあります。インドは太陽光発電容量で世界3位の規模を持ち、2030年に再エネ容量500GWを目指しています。

予測精度が上がれば、発電の変動を抑えられます。電力の安定化は、エネルギー安全保障と経済成長の両方に効果をもたらします。

現実的な落としどころとこれからの課題

期待だけで進めるのは危険です。現地政府や機関と協働し、小さな実証を重ねることが重要です。評価指標を明確にし、データガバナンスや倫理の整備も並行して進めるべきです。

AIは万能薬ではありませんが、適切に使えば強力な助手になります。過度な期待を避け、現実的なロードマップを共有することで、持続可能な発展が見えてくるでしょう。

インドの現場は、技術と人材、政策が同時に動く実験場です。次の発見は、ここから生まれる可能性が高いと感じさせます。あなたもその変化の一部を覗いてみませんか?