導入文

気づかないうちに、身につける機器や家の中のデバイスが“見張り役”になる――そんな現実が日本で広がっています。スマートウォッチやスマートホーム、健康リングといった身近な機器が、加害の道具に変わる事例が増加中です。読んでいただくと、何が起きているのか、そして私たちに何ができるかが見えてきます。

何が起きているのか

DV支援団体の観測では、AIや常時接続されるデバイスを使った新たな支配の形が増えています。位置情報や健康データが相手の行動を制御する手段になり得ます。証拠が残りにくかったり、被害に気づきにくかったりする点が厄介です。

統計が示す現実

Refugeの最新統計では、2025年末の3か月間に829件の相談が寄せられ、前年同期比で62%増となりました。とくに30歳未満の被害が24%増加しており、若年層がデジタル機器を通した被害にさらされやすい傾向が出ています。

どの機器が狙われるのか

代表的な例はスマートウォッチ、Ouraリング、Fitbit、スマートホーム機器です。これらは常時データを送受信し、持ち主の生活パターンや健康状態を可視化します。想像してください。普段は心拍を測るだけのリングが、実は“居場所の履歴”を明かす鍵になることを。

なぜ発見が難しいのか

データは日常の一部として蓄積されます。目に見える暴力と違い、被害は徐々に進行します。被害者が自分で被害を説明しにくい場合も多く、支援につながりにくいことが問題です。

社会が取るべき対策

早期発見と迅速な支援体制の構築が最優先です。加えて、次の取り組みが必要です。

  • 教育と啓発:利用者にデータの扱い方や危険の兆候を伝える。学校や職場での啓発も有効です。
  • 安全設計(セーフ・バイ・デザイン):メーカーは利用者保護を前提にした設計を進めるべきです。
  • 透明性とデータ権利:誰がどのデータを持つかを明確にし、ユーザーが制御できる仕組みを整えること。
  • 法制度とガイドライン:技術の進化に合わせたルール作りを急ぐ必要があります。

誰が責任を持つのか

製品を作る企業、サービスを提供する事業者、そして行政の三者に役割があります。設計段階での安全配慮、販売後のサポート、発見時の迅速な対応が求められます。被害者支援団体への連携も重要です。

私たちにできること

まずは自分の持つ機器の設定を見直してください。位置情報やデータ共有の設定を確認するだけでリスクを下げられる場合があります。また、身近な人の変化に気づいたら相談窓口を案内するなど、周囲のサポートも大切です。

落としどころと希望

技術そのものは生活を豊かにします。一方で、新しい危険が生まれるのも事実です。重要なのは、安全を前提にした設計と、被害を早く見つける社会の仕組みです。私たち一人ひとりが関心を持つことで、技術と暮らしの適切なバランスを作れます。