企業AIの主導は誰が握るべきか?Gleanの視点
Gleanの事例を契機に、企業AIは単一部署の管轄を超えた横断的なガバナンスが求められることが明確になり、IT・法務・事業側が協働して信頼できるAI基盤を作ることが重要だと示唆しています。
企業AIの主導は誰が握るべきか?Gleanの視点
朝の会議で、横に座る同僚より先にAIが議事録を出してくる──そんな光景はもう遠い未来の話ではありません。企業内のAIは、単なる質問応答ツールから、日々の業務を支える基盤へと進化しています。今回はその潮流をリードするGleanの見解を手がかりに、誰が「AI層」の権限を持つべきかを考えます。
エンタープライズ検索からAIワークアシスタントへ
エンタープライズ検索とは、社内ドキュメントやナレッジを横断的に探せる仕組みのことです。Gleanはもともとその分野で知られていましたが、今は「AIワークアシスタント」へと役割を広げています。AIワークアシスタントとは、単に答えを返すだけでなく、業務プロセスに入り込んで作業を補助したり、作業フローを自動化したりするツールを指します。
この変化は、ツールの配置場所が変わることを意味します。検索ボックスだったものが、意思決定や承認フローにも関わるレイヤーへと移るのです。
誰がAI層の“指揮権”を持つべきか
GleanのCEOは、AI層の所有権やガバナンスは組織の権限構造と密接に結びつくと述べています。ここで重要なのは「単独管理」ではなく「横断的な責任分担」です。
例えるなら、AI層は都市の交通システムのようなものです。交通ルール(ポリシー)を決めるのは行政(経営層)、車両の整備は技術チーム、ルート設計は事業側という具合に、役割分担が必要です。どれか一つでも欠けると、渋滞や事故(運用トラブル)が起きます。
現場で何が変わるのか
現場の変化は目に見える形で現れます。エンジニアは単にコードを書く役割から、ツールの選定や連携、運用まで責任範囲が広がります。法務やコンプライアンスは、データ利用や説明責任の枠組み作りで重要な役割を担います。事業部門は現場ニーズを定義し、優先順位を決めます。
たとえば、外部の大規模言語モデル(LLM)を使う場合、どのデータを送ってよいか、どのくらいログを保持するかといった運用ルールを決めておかないと、思わぬ情報漏洩リスクが生じます。
今すぐ取り組める実務的ステップ
現状マップを作る
- まず、どの部署がどのAI機能を使っているかを可視化してください。責任者の所在も明確にします。
役割分担をルール化する
- IT、法務、事業部で判断基準を作り、承認フローを決めます。現場の裁量とガバナンスのバランスが肝心です。
小さく試して学ぶ
- パイロットプロジェクトで技術的・運用的な課題を洗い出しましょう。失敗から学ぶ仕組みも設計します。
監視と評価の仕組みを入れる
- 利用状況のログ、性能指標、倫理・コンプライアンスに関するチェックリストを定期的に見直します。
最後に:問いを持って進めること
組織ごとに最適解は異なります。まずは次の三つの問いを自社で投げかけてください。
- 誰がAIの方針決定を行うのか?
- 誰が日々の運用と監視を担うのか?
- 問題が起きたとき、誰が最終責任を取るのか?
Gleanの示す方向性は「横断的なガバナンス」の重要性です。完璧な設計は存在しませんが、小さな実験と継続的な見直しで、信頼できるAI基盤は着実に作れます。まずは自社の権限構造を俯瞰してみてください。意外な“盲点”が見つかるはずです。