若者の“寄り添い手”としてのAI

近年、AIが若者の日常に溶け込みつつあります。会話できるタイプの人工知能、いわゆるAIチャットボットは、テキストで悩みを話せる道具です。ウェールズの最新調査は、その実像をはっきり示しました。

背景と調査のポイント

英国ウェールズを含む地域で行われた調査では、11,000人を超える若者が対象になりました。とくに注目されたのは、暴力の影響を受けた13〜17歳の層です。調査では、この層のおよそ40%がメンタルヘルス支援としてAIチャットボットに相談していることが分かりました。

なぜ若者はAIに向かうのか。その背景には、従来の医療や支援サービスに長い待機リストがあることがあります。順番を待つ間、話を聞いてくれる相手が身近にいることの価値が高まっているのです。

現場の声:ChatGPTに救いを求めたケース

ロンドン郊外のトッテナムに住むティーン、Shanさんの体験は印象的です。友人の喪失という深い悲しみの直後、彼女はChatGPTに助けを求めました。従来のサービスを試した経験もありましたが、AIとの対話は安全で威圧感が少なく、すぐにアクセスできる点がよかったと言います。

この事例は、AIが“夜遅くに付ける小さな灯り”のように感じられる場面を示しています。人に話しづらい感情も、画面越しなら吐き出せることがあります。

利点と同時に浮かぶ課題

AIが提供する気軽さや即時性は大きな利点です。ですが注意も必要です。AIの回答が常に正確であるとは限りませんし、危険なアドバイスが混ざる懸念もあります。専門家は、AIを補助的なツールと位置づけるべきだと指摘します。

そのためには、明確なガイドラインと監督体制が欠かせません。医療現場へAIを取り入れる際は、品質管理や安全性の評価が重要になります。

これからの取り組みへ:連携と公平性が鍵

今後は教育機関、保護者、自治体、医療機関が連携して取り組む必要があります。AIを含むデジタルヘルスの利用環境を整えることで、安全性と信頼性を高められます。待機時間の短縮やアクセスの公平化も並行して進めるべき課題です。

AIは万能の解決策ではありません。しかし、適切な監督と補完的な運用があれば、若者の心の支えになり得ます。私たちが目指すのは、誰もが安心して相談できる社会です。小さな画面越しの声にも、耳を傾ける仕組みを作っていきたいものです。