GPT-5.2のざっくり概要

リリースの背景

  • リリース時期:2025年12月12日 (日本時間)
  • 文脈:Gemini 3シリーズが各種ベンチマークで存在感を増すなか、コーディングやエージェント用途に特化したアップデートとして投入された世代。

OpenAI自身が「コードとエージェントタスクにフォーカスしたフラッグシップ」と位置づけており、
「チャットでちょっとした相談をするモデル」というより、業務や開発に組み込んでガンガン回すことを想定したモデルになっています。

基本スペック

  • コンテキスト長:約40万トークン級(入出力合計)

  • 最大出力:約12万トークン級

  • 知識カットオフ:2025年8月末

  • 対応モダリティ:テキスト+画像(音声・動画は別API)

  • 価格帯(APIの一例・Thinking系)

    • 入力:100万トークンあたり 約$1.75
    • 出力:100万トークンあたり 約$14
    • キャッシュ入力:90%オフ

さらに上位には、より大規模・高精度な GPT-5.2 Pro ラインもあり、
こちらは「大企業・金融・研究などの超ヘビー用途」を想定した、かなり高価格のモデルになっています。

ChatGPT上では、Plus / Team / Enterprise などの有料プランから順次利用可能になっていると公表しています。


GPT-5.1から何が変わったのか?

一番気になるのは「5.1から見て何がそんなに良くなったの?」だと思います。
ポイントは大きく分けて次の4つです。

コーディング・エージェントがかなり強くなった

GPT-5.2の一番の売りはここです。

  • 複数ファイルに跨る変更を一貫性を保って提案・適用しやすくなった
  • 既存プロジェクトのコードを読み込み、設計意図を踏まえたリファクタリング案を出しやすい
  • テストコードの生成 → テスト失敗の解析 → 修正案の提示、という一連の流れがスムーズ

つまり、「一緒に開発してくれるペアプロパートナー」寄りの挙動が強化されたイメージです。

企業パートナーの声でも「GPT-5.1からコード周りは明確なジャンプがある」という評価が多く、
「コード用途をメインにするなら5.2に乗り換えたい」と感じるような変化になっています。

長文・長期タスクでの「安定度」が上がった

コンテキスト長そのものは5世代と同程度ですが、振る舞いの安定感が改善されています。

  • 長いチャットセッションでも、合意した前提や制約を忘れにくい
  • やりとりが進む中での「話の脱線」「勝手に仕様変更」が減少
  • 同じプロジェクトを日をまたいで進めるような使い方でも、方針がブレにくい

「ときどき会話の初期条件を忘れて暴走する」といったLLMあるあるが、かなり抑えられている印象です。

ベンチマーク上の性能ジャンプ

外部ベンチマークでは、数学・科学・高度推論系のタスクで、
Gemini 3シリーズと肩を並べる、あるいは用途によっては上回る結果も報告されています。

また、OpenAI独自の「実務タスクベンチ」では、

  • 44職種の業務タスクを対象に
  • 人間の専門家と同等品質のアウトプットを
  • 11倍のスピード・1%以下のコストで達成した

といった数字もアピールされており、「実務で回してなんぼ」という方向性がはっきりしています。

速度とコスト効率

単価だけを見ると、GPT-5.1よりやや高めではあるものの、

  • 1回の呼び出しで得られる品質が上がる
  • 再プロンプトややり直しが減る

といった理由から、トータルコストはむしろ下がるケースも多いと説明されています。

また、ChatGPTの高速モードなどで培われた低レイテンシ最適化が反映されており、
体感的なレスポンスも、同クラスのモデルとしてはかなり速い部類です。


Gemini 3 Proってそもそもどんなモデル?

比較対象として名前が挙がる Gemini 3 Pro についても、簡単に整理しておきます。

概要

  • 提供元:Google(DeepMind)

  • 位置づけ:Gemini 3シリーズのフラッグシップモデル

  • 特徴:

    • 高度な推論
    • エージェントワークフロー
    • 大規模マルチモーダル(テキスト+画像、場合によって動画など)

API上では gemini-3-pro 系のモデルとして提供されており、
Google Cloud / Vertex AI との統合も前提とした設計になっています。

おおまかなスペック

  • コンテキスト長

    • 入力:最大100万トークン
    • 出力:最大64kトークン級
  • 知識カットオフ:2025年初頭(2025年1月ごろ)

  • モダリティ:テキスト+画像(動画・音声は別モデル)

とにかく巨大なコンテキストを一気に突っ込みたい」というニーズに強く、
大容量PDFや長大なコードベースをそのまま流し込みたい場合には有力な選択肢になります。

料金イメージ

価格はコンテキストの大きさで2段階に分かれるのが特徴です。

  • 〜20万トークン程度の利用

    • 入力:100万トークンあたり 約$2
    • 出力:100万トークンあたり 約$12
  • 20万トークンを超える大コンテキスト利用

    • 入力:100万トークンあたり 約$4
    • 出力:100万トークンあたり 約$18

つまり、

  • 普通サイズ(〜20万トークン):GPT-5.2と大体同じくらい
  • 巨大サイズ(20万トークン超):やや割高になる傾向

という感覚です。


GPT-5.2 vs Gemini 3 Pro 比較表

ここまでの情報を整理して、ざっくり比較してみます。

項目 GPT-5.2 (Thinking) GPT-5.2 Pro Gemini 3 Pro
提供元 OpenAI OpenAI Google (DeepMind)
コンテキスト長 〜40万トークン級(入出力合計) 同等クラス 入力最大100万トークン / 出力最大64k
最大出力 約128kトークン 約128kトークン 約64kトークン
知識カットオフ 2025年8月末 2025年8月末 2025年1月ごろ
得意分野 コーディング、エージェント、実務文書、長文要約 さらに大型の業務・分析 超長文処理、大規模マルチモーダル推論
モダリティ テキスト+画像 テキスト+画像 テキスト+画像(動画・音声は別モデル)
推論スタイル Reasoning系トークン対応の「思考プロセス重視」 より高精度なReasoning thinking_level 指定で推論深度を切り替え
代表的な用途 コーディングエージェント、業務自動化、資料作成 金融・法務・研究など 巨大PDF/コードベース解析、マルチモーダル分析
API価格の傾向 入力がやや安い / 出力はやや高い 非常に高価格 入力がやや高い / 出力がやや安い

ざっくりまとめると:

  • 超巨大コンテキスト(100万トークン級)が欲しい → Gemini 3 Pro
  • コード・エージェント・実務ワークフロー重視 → GPT-5.2

という住み分けが見えます。


用途別の「どっちを選ぶ?」ガイド

コーディング・エージェント用途

こんなニーズなら GPT-5.2が第一候補 になりそうです。

  • 既存プロジェクトに入り込んで、設計意図を踏まえた変更を出してほしい
  • テスト・修正・デプロイといった一連のCI/CDフローをエージェント化したい
  • 「一緒に設計レビューやコードレビューをしてくれる相棒」がほしい

GPT-5.2は、仕様理解とコード編集の一貫性が高く、
「1回の指示でやってくれる範囲」がかなり広がっています。

Gemini 3 Proもコードは書けますが、設計意図を踏まえた長期的なエージェント運用なら、現状はGPT-5.2に分がある、というイメージです。

超長文ドキュメント・巨大コードベース

  • 数千ページの技術文書や契約書
  • 長年蓄積したチャットログ・ナレッジベース
  • モノレポ級の巨大コードベース

こうした「とにかくデカいものを一気に読ませたい」場合は、Gemini 3 Proの1Mコンテキストが光ります。

もちろん、GPT-5.2の40万トークンも十分大きいので、

  • 一度に突っ込む量をある程度絞れる
  • 事前にチャンク分割+要約パイプラインを組んでもよい

といった条件なら、GPT-5.2側でも十分対応できます。

画像・マルチモーダル系タスク

両者ともテキスト+画像のマルチモーダルに対応しており、例えば:

  • スライド資料やUIモックを読み取り、要約・改善案を出す
  • 手書きメモやホワイトボード写真から、整理されたテキストや表を起こす
  • 写真+テキスト指示からキャプション・説明文を生成する

といった用途に向きます。

  • Gemini 3 Pro:

    • 画像・動画解析の解像度やコストを細かくチューニングでき、
    • 長尺動画や高解像度画像を分析するワークロードが得意。
  • GPT-5.2:

    • OpenAIの画像生成(DALL·Eなど)や動画生成(Soraなど)と組み合わせた、
      「生成+解析+自動処理」のパイプラインを作りやすいのが強みです。

コストとエコシステムでの選び方

料金だけではなく、どのプラットフォームを中心に据えるかも重要です。

  • すでに OpenAI / Azure OpenAI / ChatGPT エコシステム を使っている

    • → メインは GPT-5.2+サブで廉価モデル の構成が自然
  • すでに Google Cloud / Vertex AI / Google Workspace を使い倒している

    • Gemini 3 Pro を中核モデル に据えると、請求・権限管理・監査が楽

どちらか一方に縛る必要はなく、
「用途ごとに最適なモデルを使い分けるマルチモデル戦略」 が現実的な解になりつつあります。


気になるところピックアップ

Q1. GPT-5.1から5.2に乗り換えるべき?

結論:実務で使っているなら、テストした上での移行検討を強くおすすめ。

  • コーディング・エージェント用途での性能向上が大きい
  • 長文・長期タスクでの安定性も改善
  • 単価はやや高くても、トータルの「やり直しコスト」が減る可能性が高い

ただし、既存システムに組み込んでいる場合は、

  • 出力フォーマット
  • 文章の長さ・スタイル
  • エッジケースでの挙動

などが変わる可能性があるため、必ず回帰テストは行うべきです。

Q2. 長いドキュメント解析はどっちが有利?

  • 100〜200ページ程度のPDF:どちらでもOK
  • 数千ページ級・モノレポ級を一度に丸ごと処理したい:Gemini 3 Pro有利

とはいえ、LLMでの長文処理は、

「上手に分割して、要約やインデックスを作りつつ段階的に処理する」

という設計自体が重要なので、
「コンテキストが大きい=いつでも正解」ではないことも覚えておくと良いです。

Q3. 料金はどっちが安いの?

ざっくり(〜20万トークン程度の利用の場合):

  • GPT-5.2:

    • 入力:やや安い
    • 出力:やや高い
  • Gemini 3 Pro:

    • 入力:やや高い
    • 出力:やや安い

という関係です。

  • 入力が多く出力はコンパクト → GPT-5.2寄り
  • そこそこ入力して大量に書かせる → Gemini 3 Pro寄り

といった具合に、ワークロードの形で有利不利が変わります。

Q4. 知識の新しさは?最新ニュースには強い?

知識カットオフは、

  • GPT-5.2:2025年8月末
  • Gemini 3 Pro:2025年初頭

なので、素の知識だけ見ると GPT-5.2の方が新しめ です。

ただし、どちらも

  • Web検索
  • 公式ドキュメントの参照
  • 独自データベースとの連携

といった「外部情報ソース」と組み合わせることが前提になりつつあるため、
ニュース・株価・法律などはモデル単体を信用しすぎないのが安全です。

Q5. セキュリティ・コンプライアンス面は?

OpenAIもGoogleも、

  • 大企業や公共機関での利用
  • コンプライアンス要件(GDPR等)
  • データ保持とアクセス管理

を強く意識しており、それぞれ専用のドキュメントや設定が用意されています。

実務では、

  • 既存のクラウド(AWS / Azure / GCP)の選定
  • データの保存リージョン
  • 監査ログやアクセス権の管理

などが重要になるため、社内の情シス・法務とセットで検討するのが現実的です。


まとめ:2025年末時点の「ざっくり結論」

  • GPT-5.2

    • コーディング、エージェント、業務ワークフロー向けの実務寄りフラッグシップ
    • GPT-5.1からのアップグレード候補としてかなり有力
  • Gemini 3 Pro

    • 超長文・大規模マルチモーダルに強い万能型の思考エンジン
    • 1Mコンテキストをフルに活かせるワークロードでは唯一無二の選択肢

どちらか一方が「完全勝利」というより、

用途ごとに最適なモデルを選ぶマルチモデル時代に入った

というのが、2025年末時点のリアルな状況です。

  • OpenAI / ChatGPT を中心にしたエコシステム → GPT-5.2軸
  • Google Cloud / Workspace を中心にしたエコシステム → Gemini 3 Pro軸

をベースにしつつ、必要に応じてお互いのモデルを補完的に使っていく、
そんな柔軟な戦略が今後のスタンダードになっていきそうです。


参考URL