教室に新しい相棒が入った

オーストラリアの一部の学校で、宿題提出後にAIチャットボットと生徒が対話する取り組みが確認されました。対話は「Thinking Mode」と呼ばれ、解き方や考え方を言葉にして説明する場面を作ります。Thinking Modeは生徒の思考過程を引き出すための対話形式で、単に答えの正誤を見るだけではありません。

ねらいは理解の「見える化」

導入の目的は明快です。生徒がどこでつまずいたかを即座に把握して、教師が必要な支援を行えるようにすることです。例えば数学の宿題で、生徒が途中の式や考え方を説明することで、教師は教室で補助する箇所をすぐ特定できます。AIは拡大鏡のように、理解の細部を映し出す役割を担います。

期待できることと実例のイメージ

個別支援が手早く行える点は魅力です。生徒は自分の考えを整理する機会を得て、学習意欲や自己効力感が高まることも期待されます。たとえば、英語の読解でAIと要約をやり取りすることで、語彙や論理構成の弱点が明らかになります。

しかし懸念も大きい

AIの解釈ミスや偏りは不公平を生みかねません。評価をAIだけに頼ると誤判定の恐れがあります。さらに、対話の頻度や形式が生徒にプレッシャーを与える可能性も指摘されています。個人情報や学習データの扱いも慎重であるべき課題です。

格差のリスク――「二速体制」の指摘

Independent Schools Australiaは、技術の普及速度に差が出れば学校間の機会格差が広がると警鐘を鳴らしています。高機能なツールを使える学校とそうでない学校で、学習体験に違いが出る可能性があるのです。

実施にあたっての現実的な処方箋

導入を成功させるためには、次の点が重要です。

  • 透明性のある評価基準を設けること
  • 教員研修とサポート体制を充実させること
  • データ管理とプライバシーのルールを明確にすること
  • 資源配分の公平性を確保すること
  • 段階的かつ説明責任を伴う実装を行うこと

これらは単なる注意点ではなく、安心して使える環境を作るための必須条件です。

最後に――慎重に進める価値

現時点での報道は限定的で、学校ごとに導入の度合いが異なります。AI対話は個別支援の扉を開く可能性がありますが、同時に新たな課題も持ち込みます。技術の速さに任せるのではなく、透明性と教員の準備を両輪にして段階的に試していくことが、教育の革新と公平性を両立させる近道でしょう。