教室の片隅にAIがいる日が来る──そんな問いを抱えながら、39歳で教師になった私は毎日を試行錯誤しています。

文章を書く仕事から教壇に立つ道へ転じたとき、表現力をどう生かすかを考えました。そこへAIの普及が追い打ちをかけます。生徒全員がAIを使える時代、授業も評価も変える必要があります。怖さもありますが、希望もあります。

AIは英語教育の“土台”を揺るがすのか

AIは読解や作文、思考のあり方に影響を与えます。ここで大事なのは、AIが答案を作る力と、生徒自身が考える力をどう両立させるかです。

AIの出力をそのまま採点するのではなく、思考過程を可視化する活動を組み込むことが求められます。例えば、AIに作文を作らせたあと、生徒に「どこを変えたか」「なぜその表現にしたか」を説明させる。これだけで評価軸が深まります。

全生徒がAIを使える時代の授業設計

AIは複雑で流暢な文章を短時間で作れます。だから重視すべきは、分析力や創造的思考などの高次スキルです。

具体例を一つ。生徒にAIで下書きを作らせ、その出力の誤り探しと改善案をグループで出させる課題です。AIの「正しさ」だけでなく、出力の出典や根拠の確認を学ぶ訓練になります。

授業設計では、以下を意識するとよいでしょう。

  • AIを道具と位置づける。主体は常に生徒と教師。
  • 思考過程を可視化するタスクを取り入れる。
  • 創造性や批判的思考を測る評価指標を用意する。

これらは授業だけでなく評価の透明性も高めます。

教育の目的と評価を再考する

学校で本当に何を達成したいのか。どの方法で進めるのか。どう測るのか。AIはこの三つの問いを鮮明にします。

答えを急ぐ必要はありません。実践と研究を並行させ、小さな合意を積み上げる姿勢が大切です。評価には作文の出来栄えだけでなく、思考の説明責任や批判的思考の発展を盛り込むべきです。

現場の感覚—不安と発見

導入当初の感覚を私は自分で“panic attack”と表現しました。急に変化が押し寄せるときの、不安と手が震えるような感覚です。

それでも現場では有用な使い方が見え始めています。AIを教材にして誤り探しをする。AIの返答を出典確認の練習に使う。教師が目標を提示し、意図的に介入することでAIの利点を生かせます。

依存を防ぐには、デジタルリテラシー教育も必要です。出典確認や引用のルール、プロンプトの作り方など、ツールの使い方自体を教えることが長期的な安定に繋がります。

穏やかな結論—AIを“味方”にする設計

AIを機械か味方かで二分するのは簡単です。しかし現実的なのは、AIを補助的な味方として使いながら、教育の目的と評価を再設計することです。

教師の倫理的判断と専門性がより重要になります。思考過程の可視化、創造性を促す課題設計、デジタルリテラシーの強化を組み合わせれば、AI時代の英語教育は安定します。

最後に一言。AIは自転車の補助輪のようなものです。一人で漕げる力を育てることを忘れなければ、道具は生徒の成長を助けてくれます。