ChatGPTに「グループチャット」登場──AIと人が同じルームで協働する時代へ
OpenAIがChatGPTに新機能「グループチャット」を公開した。最大20人が同じルームに入り、ChatGPTを含めた全員で計画立案や議論、資料共有ができる。GPT-5.1 Autoによる高度な文脈理解で、必要なときにだけ発言する“空気の読めるAIメンバー”として機能。個人メモリは使用されず、プライバシーも分離。日常の相談からチームのブレストまで、AIと人が同じ空間で協働する新しいコミュニケーション形態が始まった。
OpenAIが、ChatGPTに新機能「グループチャット」を試験導入しました。
友人・家族・同僚と同じスレッドにChatGPTを呼び込み、一緒に会話・意思決定・作業ができる機能で、日本を含む一部地域からパイロット提供が始まっています。(OpenAI)
1. グループチャット機能の概要
- 複数人+ChatGPTが同じタイムラインで会話
旅行の計画、飲み会の店選び、プロジェクトのブレストなどを、ChatGPTにサマリ・比較・下書き作成をさせながら進められる。(OpenAI) - 最大20人まで参加可能
招待リンク経由で1〜20人が同じチャットに参加できる仕様。(Gadgets 360) - 対象プランと地域
現時点では、日本・ニュージーランド・韓国・台湾のログインユーザ(Free / Go / Plus / Pro)が対象のパイロット。(OpenAI)
OpenAI自身は、これを「ChatGPTを一人用のボットからコラボレーションプラットフォームへ進化させる第一歩」と位置づけています。(OpenAI)
2. どうやって使う?UIと基本仕様
2-1. 作成・招待・参加の流れ
公式ブログや各種レポートをまとめると、基本フローは次の通りです。(OpenAI)
ChatGPT(Web/モバイル)の任意のチャット画面右上にある**「人型アイコン(people)」ボタン**をタップ
新規チャットなら、そのまま空のグループチャットが作成される
既存の1対1チャットから開始する場合は、
- その会話のコピーを新しいグループとして作成
- 元の個人チャットはそのまま残る
グループ内から招待リンクURLを生成し、共有
リンクを受け取った人は、招待を承諾した上で参加
参加者はグループに入ると、それまでの会話履歴を閲覧できる
作成されたグループチャットは、サイドバーに専用セクションとして一覧表示され、後からすぐに戻れるようになっています。(OpenAI)
2-2. プロフィールと表示
初めてグループに参加・作成する際、ユーザは以下を設定するよう求められます。(OpenAI)
- 名前(表示名)
- ユーザー名
- アイコン写真
これにより、「誰がどのメッセージを書いたのか」が一目で分かるグループチャットUIになっています。
3. ChatGPT側の挙動:GPT-5.1 Auto と機能一覧
3-1. 返信は GPT-5.1 Auto が担当
グループチャット内でChatGPTが回答する際には、GPT-5.1 Autoが使われます。(OpenAI)
プロンプト内容と、ChatGPTが返信している相手のプラン(Free / Go / Plus / Pro)に応じて、
最適なモデル(Instant / Thinkingなど)を自動選択レートリミットは「ChatGPTが発言したときだけ」カウント
- 人間同士のやりとりは制限に影響しない
- 制限は「その返信を受け取った人」の枠から消費される(OpenAI)
3-2. 利用できる機能
グループチャット内でChatGPTが使える機能は、通常のチャットとほぼ同等です。(OpenAI)
- Web検索
- 画像・ファイルのアップロード
- 画像生成
- 音声入力(ディクテーション)
- 反応(絵文字リアクション)
- プロファイル画像を使った、メンバー個別の画像生成 など
また、試験段階の情報として、以下のようなUI要素にも対応すると報じられています。
- メッセージへのリアクション
- 特定メッセージへのリプライ(スレッド風)
- 入力中インジケータ(typing…)(Digit)
3-3. いつ話す・いつ黙るかを「社会的ふるまい」で判断
OpenAIは、グループチャット用に**新しい“ソーシャル行動”**をChatGPTに教えたとしています。(OpenAI)
- 会話の流れを見て、「今は回答すべきか/静観すべきか」を自動判断
- 必要なときは、メッセージ内で「ChatGPT」とメンションすることで確実に呼び出し可能
- ChatGPT自身も、絵文字リアクションやメンバーのアイコンを使ったコンテンツ生成に対応
つまり、常に割り込んでくるボットではなく、**空気を読みながら参加する“1人のメンバー”**として振る舞う設計になっています。
4. グループごとの設定と権限管理
4-1. グループ設定でできること
参加者アイコンから開けるグループ設定では、次のような操作が可能です。(OpenAI)
- グループ名の変更
- メンバーの追加・削除(削除はグループ作成者以外にも可能)
- 通知のミュート
- ChatGPTのカスタムインストラクション(トーン・役割・回答スタイル)の設定
このカスタムインストラクションはグループ単位で保存され、個人のChatGPT体験には影響しないと説明されています。(Gadgets 360)
4-2. 参加と退出のルール
- すべての参加者は、招待を承諾しない限りグループに入らない
- 誰が参加しているかは常に全員に見える
- 参加者はいつでも自由に退出可能
- 参加者は他メンバーを追放できるが、グループ作成者だけは自分で退出しない限り残り続ける(OpenAI)
5. プライバシー・安全性:個人メモリとは完全分離
グループチャットで最も気になるのが、**「自分の個人チャットとの情報混ざり」**ですが、OpenAIはここをかなり強調しています。(OpenAI)
- グループチャットは個人チャットとは完全に別扱い
- ChatGPTの個人メモリはグループでは一切使用されない
- グループ内の会話からも新しいメモリは作成されない
さらに、18歳未満のユーザがグループにいる場合、
- チャット全体に対して自動的にセンシティブコンテンツの露出を抑えるフィルタが有効化
- 保護者はペアレントコントロールから、グループチャット機能自体をオフにすることも可能(OpenAI)
一方で、最近のニューヨーク・タイムズとの訴訟をめぐり、OpenAIが「ユーザの会話ログ2,000万件の提出命令」に異議を申し立てていることからも、会話データの扱いは今後も大きな論点であり続けると考えられます。(iweaver.ai)
6. どんな場面で使える?具体的ユースケース
OpenAI公式と各種記事をベースに、想定ユースケースを整理すると次のようになります。(OpenAI)
6-1. 日常生活・プライベート
旅行や週末のプランニング
- 行き先候補の比較
- 行程表・持ち物リストの自動生成
飲み会や会食のお店探し
- 参加メンバーの好み・予算を踏まえた候補提示
ルームシェア・同棲相手とのインテリア相談
- レイアウト案・配色パターン・買うべき家具リストなど
6-2. ビジネス・教育
チームでの企画ブレスト・要件整理
- メモ代わりにChatGPTにサマリをまとめさせる
新テーマの共同リサーチ
- URLや資料を共有 → ChatGPTに要約・比較させる
授業・勉強会でのディスカッションサポート
- 全員の質問を一つのスレッドに集約し、ChatGPTが補足解説
6-3. 「Projects」機能との関係
企業向けには、チャット・ファイル・指示文をまとめて管理できる**Projects(プロジェクト機能)**も別途提供されており、将来的にはグループチャットと組み合わせた本格的なチームコラボ環境が想定されています。(OpenAI)
7. 他のチャットツールとどう違うのか
WhatsAppやMicrosoft Teamsなども、すでにボット連携+グループチャットを提供していますが、ChatGPTのグループチャットは以下の点で差別化されます。(ビジネススタンダード)
AIが「中心メンバー」として常駐
- まとめ役・書記・プランナーを兼ねる存在
全員の会話文脈を見たうえでの回答
- 特定の人との個別スレッドではなく、グループ全体の流れを読んで発言
GPT-5.1 Autoベースの高度な生成能力
- 文書生成・画像生成・リサーチ・要約を1つの場で完結
一方で、エンドツーエンド暗号化の有無、企業向けのコンプライアンス対応などは、今後ユーザ企業による評価・比較が進むポイントになるでしょう。
8. 現状の制約と今後の展望
8-1. 現時点の制約
- 利用できる地域は日本・ニュージーランド・韓国・台湾の4地域のみ
- 参加人数は最大20人
- グループチャット自体はChatGPTのコンシューマ向けUI機能であり、
直接APIから同等の機能を呼び出せるわけではない(現時点)。(OpenAI)
また、モデル側の限界として、
- ハルシネーション(事実誤認)
- 長い指示や意図の一部取りこぼし
といったLLM共通の課題は依然として残るため、グループでの意思決定に使う場合も、最終判断は人間側での検証が必須です。(OpenAI)
8-2. 今後予想される進化
OpenAIは公式ブログで「これはあくまで第一歩」としており、今後の方向性として次のような発展が考えられます。(OpenAI)
- プロジェクト機能とのより密な連携(チャット+ファイル+タスク)
- 参加者ごとに異なる権限・ロール設計
- より細かなメモリ制御(どのグループで何を覚えさせるか)
- API側での「マルチユーザ会話コンテキスト」サポート
いずれにせよ、今回のグループチャットは、
「AIとの1対1チャット」から「AIを含むマルチプレイヤー空間」への大きなシフトであり、
チームワークやオンラインコミュニケーションの形を変えていく起点になりそうです。