AI開発の現場がゆっくりと、しかし確実に変わっています。単一のAIと順番にやり取りするスタイルから、複数のインスタンスを同時に動かす並行運用へと舵を切るチームが増えているのです。この記事では、実践例と仕組みをわかりやすく紹介します。読み終える頃には、自分の現場で試してみたくなるはずです。

5つのClaudeを同時に回すという発想

ある現場の開発者、Cherny氏はClaudeのインスタンスを5つ同時に走らせています。ブラウザでClaude.aiを5つのタブに開き、タブに番号を振って役割を分担するのが基本です。たとえば、1は設計、2は実装、3はテスト、4はレビュー、5はドキュメントといった具合です。

こうすると、複数の作業が並列に進みます。オーケストラで複数の楽器を同時に鳴らす感覚です。iTerm2などの通知でどのインスタンスが入力待ちかを把握する工夫も紹介されており、見通しを良くすることが重要です。

ただし、並行運用は環境整備が前提です。ツールの連携やログ管理が整っていないと混乱します。全社導入は段階的に進めるのが現実的でしょう。

Opus 4.5を重めの“核”として使う理由

Cherny氏はOpus 4.5を「thinking for everything」と位置付け、最も重いモデルとして使っています。ここで補足しますが、重いモデルとは計算資源や応答時間が大きい代わりに、指示を少なくしても精度の高い応答を出せるモデルを指します。

トークン生成の遅さがネックに見えても、実は人間がAIの誤りを直す時間こそが本当のボトルネックです。初期投資として強力なモデルを採ることで、後工程の修正工数を減らせる場面はよくあります。

もちろん高性能モデルは運用コストが上がります。組織の体制とワークフローに合わせ、どのモデルを核にするかは慎重に判断すべきです。

CLAUDE.mdで作る自己修正のコード基盤

現場ではリポジトリにCLAUDE.mdというファイルを置き、AIの誤りや学んでほしいルールを書き溜めています。次に同じタスクをAIにさせる際、そこに書かれた指示が参照される仕組みです。

プルリクのレビューで人がエラーを見つけたら、該当箇所にタグを付けてAIの指示を更新する運用もあります。こうして人とAIが学習ループを回すことで、コードベースが徐々に“自己修正”されていきます。

比喩を使えば、CLAUDE.mdはチームの知恵袋です。間違いをメモしておけば、次から同じ失敗を繰り返しません。

slashコマンドとサブエージェントで省力化

現場では /commit-push-pr のようなslashコマンドを多用して、複数操作をワンキーで実行しています。これにより、人がする単純作業を減らせます。

さらにサブエージェントを導入し、検証やコード整形など特定のフェーズを任せる試みも進んでいます。サブエージェントは専門の助手のようなもので、反復的な作業を安定してこなしてくれます。

ただし注意点もあります。サブエージェントの設定や監視を怠ると、ツール依存が強まり予期せぬ挙動を招くことがあります。設計とモニタリングは必須です。

今後の展望と現場での落としどころ

Cherny氏は「人間の生産性を大きく上げるツールは既にある」と語ります。複数インスタンス運用、強力モデルの採用、自己修正データの蓄積、サブエージェントの活用は、どれも開発を加速します。

一方で、検証ループやガバナンス設計をないがしろにしてはなりません。まずは小さなプロジェクトで試し、測定しながら徐々に広げるのが現実的です。

最後に一言。道具が変わると仕事のリズムも変わります。Claudeを複数並べる試みは、うまく使えば開発のリズムを軽やかにしてくれるはずです。ぜひ自分の現場で、小さな実験から始めてみてください。