2025年に見えたAIの4つの現実
GPT-5系の実務実績や中国発オープンウェイトの普及、小型モデルの現場適用など、2025年はAIを賢く選び使うことで実利が得られる年だと分かってきました。
この一年で、AIは「実務の道具」へと一歩近づきました。最新モデルの実証や各国の動きを見ると、2025年は“夢物語”ではなく“現実の成果”が現場で語られる年になりつつあります。ここでは、現場で起きた変化を四つの視点でわかりやすく整理します。読み終えるころには、目の前の業務で何が使えるかが見えてきます。
1|GPT-5系が現場にもたらしたものと残る課題
GPT-5とは、会話や生成が高精度になった大型言語モデルです。正式公開は今年8月で、11月にGPT-5.1が続報として出ました。初期には誤動作や過剰応答の指摘もありましたが、ユーザーからのフィードバックで安定性が高まりました。
特に注目はGPT-5.1-Codex-Maxです。これは長時間の自動化ワークフローをこなすコーディング向けモデルで、実際に開発現場のデフォルト選択肢になりつつあります。企業の現場では、GPT-5を使ったエージェントがチケット解決率を50%以上改善した事例も出ています。数字は説得力があります。現場はKPIで成果を測り始めました。
とはいえ課題も残ります。モデルの挙動を監視する仕組みや、業務に合わせた微調整(ファインチューニング)がまだ重要です。新しい工具が増えただけで、使いこなすには学びが必要です。
2|中国発のオープンウェイトが選択肢を広げる
ここ数か月、中国製のオープンウェイト(学習済みパラメータを公開するモデル)の流通が活発になっています。MITとHugging Faceの調査では、ダウンロード数で米国を上回る場面もありました。
代表例としてDeepSeek、Qwen、ERNIEシリーズがあります。DeepSeek-R1はMITライセンスで公開され、小型モデル群も同梱しています。Qwen3はコーディングやビジョン対応のラインを整え、ERNIE 4.5はMoE(専門化する部分的ネットワーク)を含む多様な構成をApacheライセンスで提供しています。
比喩で言えば、これまで食材が限られていたキッチンに、新鮮な食材がどんどん届く感じです。現場は選べる材料が増え、コストや運用方針に合わせて最適な構成を選べるようになっています。
3|小型モデルの成熟で「端末PDCA」が現実に
小型モデルとは、数億〜数十億パラメータ程度で動作する省リソースモデルです。代表はLiquid Foundation ModelsのLFM2やGoogleのGemma 3シリーズです。小型ながら遅延が少なく、デバイスやロボットでの運用に向きます。
たとえばLFM2-VL-3Bは組み込みロボティクス向けで、近々ROSConでデモ予定です。Gemma 3は270M〜27Bまで揃い、特に270Mはファインチューニングや構造化タスクに適しています。要するに、端末単位でAIを回せるようになってきました。
この流れは重要です。プライバシー重視の現場やネットワークが制約される現場で、オフライン運用が現実的になります。ユーザーの手元で即応できるAIは、応答時間と安全性を同時に向上させます。
4|多様な選択肢が生む“現実的な実利”
2025年は、多様なモデルと商用サービスが競う年です。MetaはMidjourneyと提携し、画像生成の美的技術を取り込みます。GoogleのGemini 3は推論やコーディング、マルチモーダル理解を強化しました。AnthropicやBlack Forest Labsも野心的なモデルを投入しています。
ここで鍵になるのは「落としどころ」です。コストとオープン性、性能のバランスを考えて、現場で最大の価値を引き出す組み合わせを選ぶこと。言い換えれば、最高峰だけを追うのではなく、目的に合った道具を選ぶことが重要です。
簡単な例を挙げます。カスタマーサポートなら、応答品質と運用コストのバランスが重要です。開発現場なら、長時間の自動化を回せるコーディング特化モデルを優先するかもしれません。どちらも“実利”を生む選択です。
終わりに:選ぶ力が勝負を決める年
2025年はモデルの存在だけでなく、現場での使い方が問われる年です。新しいモデルが増え、選べる幅は広がりました。選び方を間違えなければ、AIは確実に業務を楽にします。
この記事が、次の一手を考えるヒントになれば幸いです。疑問があれば、具体的な業務や目的を教えてください。一緒に現場で使えるプランを考えましょう。