導入から間もないKaiser Permanenteの新しい初診スクリーニング。見た目は「効率化」の一言ですが、現場では思わぬ波紋が広がっています。今回は、待機時間の長期化という実情と、オンライン問診やAIが描く新しい受診フローの光と影を、現場の声を交えて分かりやすく解説します。

何が変わったのか

2024年1月以降、Kaiserは初診患者の受付フローを見直しました。ポイントは二つです。ひとつは、ライセンスを持たない事務スタッフが「はい/いいえ」の簡単な質問で患者の重症度と受診の優先度を判定する仕組みの導入です。もうひとつは、e-visit(オンライン問診)を予約前に行い、事前に症状情報を収集する流れを整えたことです。

e-visitは、患者が自宅でオンライン質問票に答える仕組みです。医師に直接会う前に症状や経過を可視化できます。トリアージ(選別)というのは、限られた医療資源を優先配分するために患者の緊急度を見極める作業のことです。

現場の声:待機延長と見過ごせないリスク

オークランドの精神科クリニックでは、新フロー導入後に急性期患者を早めに救急(ER)へ送るべきケースが増えたと報告があります。従来、資格を持つ専門職が窓口となっていた場面が、簡潔な質問をする事務スタッフ主体に変わったことで、見立てが難しいケースが受診の遅れにつながる懸念が出てきました。

来院できた患者が長時間待たされる例もあります。症状が悪化するリスクや、救急搬送の判断が遅れる可能性が指摘されています。現場では「空港の手荷物検査のように、ふるいにかける速度を上げすぎると危険物を見落とすし、ゆっくりにすると列が長くなる」というたとえで状況を表現する声もありました。

AIとオンライン問診は救世主か、それとも課題か

AIや自動化の導入は、効率化の期待を高めます。AIは大量の問診データから優先度を示す手掛かりを提供できます。とはいえ、AIの判断は学習データや設計方針に左右されます。現場の医師やスタッフは、AIが出す結果をどう検証し、最終判断にどう組み込むかを慎重に見定める必要があります。

e-visitを中心に据えることで受診前に情報が揃い、診療効率は上がり得ます。一方で、オンライン評価だけでは読み取れない微妙な表情や生活背景が見落とされる恐れもあります。ですからオンラインと対面のバランス調整が重要です。

影響は誰に及ぶのか

最も影響を受けるのは、行動健康(精神・行動に関わる健康)問題を抱える患者と、その支援に当たる現場スタッフです。患者は適切な時期に適切なケアを受けたいと考えています。スタッフは安全なリファー(適切な他部署への紹介)と緊急対応の確保に神経を使っています。

新フローは事務作業の負担を増やす一面もあります。人手が足りない状況で事務スタッフに重い選別を任せると、本来必要な判断が後回しになる恐れがあります。組織内での情報共有と役割分担がカギです。

現場で求められる対策

まずは待機時間と選別フローを可視化することが第一歩です。具体的には以下のような取り組みが有効です。

  • 待機時間や転帰(患者の経過)を定量的に測る指標を設定する
  • オンライン問診と対面診療の棲み分けルールを明確にする
  • AIや自動化の判断を定期的にレビューする仕組みを作る
  • 外部評価や第三者検証を導入して透明性を担保する

こうした対策は、安全性の担保と効率の両立に寄与します。短期的には現場の負荷を減らす工夫が必要ですし、中長期的にはデータに基づく改善サイクルが重要です。

まとめ:期待と検証を両立させるために

Kaiserの新スクリーニングは、受診フローの変化という大きな実験です。効率化のポテンシャルは高い一方で、現場の声に耳を傾け、透明性の高い指標で効果を評価することが欠かせません。患者の安全を守るために、現行フローの定期的な見直しと外部検証を進めることが、今後の鍵になるでしょう。

最後に一言。自動化は道具です。正しく使えば助けになります。使い方を誤れば、思わぬトラブルを招きます。Kaiserだけでなく、医療現場全体で見守り、育てていく姿勢が求められています。