小さなチームが描く“大きな”再出発

Pebbleの創業者が率いる小規模チーム、Core Devicesが発表したのは指輪型の記録デバイス「Index01」です。創業者のEric Migicovsky氏は、資金調達に頼らない自資運営を選びました。小さな船で長く航海するための再出発といえます。

Index01は、長時間の常時録音を目指す機械ではありません。むしろポケットに入れたメモ帳のように、短いひらめきや会話の断片をすばやく残すためのツールです。指にはめる小さな「外部の付箋」と考えるとイメージしやすいでしょう。

誕生の背景と設計思想

Core Devicesは5名前後の少人数で運営されています。Pebbleの遺産を受け継ぎつつ、資金依存から離れた持続可能なハードウェア事業を目指しています。ここでいう持続可能性は、頻繁な追加投資に頼らず収益を出せる構造を作るという意味です。

GoogleがPebbleOSをオープンソース化したことを受け、Index01はオープン性を重視した設計です。オープンソースとは、ソースコードを公開して誰でも確認や改良ができる状態を指します。これによりコミュニティによる改善や互換性拡張が期待できます。

また、Index01は“常時待機するAIアシスタント”ではありません。AI機能はスマートフォン上のモデルで処理されます。オンデバイス処理とは、インターネット上のサーバーではなくスマホ本体で音声認識などを処理する方式です。これにより、クラウドにデータを送る前に端末内で解析できる点が強調されています。

録音の仕組みとプライバシー

録音はボタンの長押しで開始します。押している間だけ録音されるため、誤録音を抑えやすい設計です。録音データはクラウドに保存されません。スマートフォンと同期してスマホ側で処理・保存されます。

この仕組みは外部監視のリスクを下げます。音声認識やAIモデルもスマホ上で完結するため、クラウド転送を前提としないプライバシー配慮が効いています。さらに、録音機能に購読プランは無く、追加費用が発生しない方針です。

技術的な制約と実用性

Index01は最大5分まで録音できます。長時間の会議録音には向いていませんが、短いメモやアイデアの保存にはぴったりです。録音は一時的にリング本体にも保存され、後でスマホに同期できます。

Bluetoothの範囲外でも、端末内での処理と記録・文字起こしが一部可能です。言語対応は99言語以上をうたっています。原音も保持するため、必要なら後で詳細を聞き直せます。

防水性能は1メートルで、水滴や手洗いに耐えます。ただし水泳等の水中活動での使用は避けるよう案内されています。

エコシステムと今後の展望

Index01はPebbleアプリやNotionなどと連携することを想定しています。Pebbleシリーズの他デバイスのスクリーンにも録音内容を表示できる設計です。既にPebble 2 Duoの出荷は完了しており、Time 2へのアップグレードも進行中です。事前予約は約25,000件との情報もあります。

Core Devicesはハードウェアを核に安定収益を目指します。価格設定や今後の製品展開次第で、同種のハードウェア事業に影響を与える可能性があります。

期待と落としどころ

Index01は「短い外部記憶としての補助」を目指したプロダクトです。日常のメモや会話の断片を素早く残したい人には魅力的でしょう。一方で、常時リッスンするAIや長時間録音を期待する人には適しません。

使い勝手はシンプルです。ボタンの単押しやダブルプレスで機能を割り当てられます。今後のアップデートやコミュニティの改良で使い道は広がる可能性があります。

最後に一言。Index01は大声で未来を謳うタイプのガジェットではありません。静かに、しかし確実に日常の「忘れたくない瞬間」をそっと補助する道具として届くはずです。プリオーダーは2026年3月に終了予定です。興味がある方は早めに動くとよいでしょう。