AI データセンター建設ラッシュが加速する中、メモリチップメーカーの最大手が動いた。Samsung と SK Hynix は、韓国政府の支援を受けて計 590 億ドル(約 8 兆 1,000 億円)の大規模投資計画を発表。高帯域幅メモリ(HBM)の供給体制を拡張し、世界市場での支配力をさらに強化する構え。

AI データセンター需要が引き起こす投資競争

OpenAI、Google、Meta、Microsoft などが生成 AI インフラへ数百億ドルを投じる中で、それを支える部品供給業者の価値が急速に高まっている。特にメモリチップは、GPU と並んでデータセンター構築の最重要コンポーネント。Samsung と SK Hynix がこのタイミングで大型投資を発表したのは、需給ひっ迫と価格上昇のトレンドが当面続く見通しを示唆している。

投資の内訳:新工場から R&D まで

発表によれば、590 億ドル投資の内訳は以下の通り:

  • 新工場建設:800 兆ウォン(約 6 兆 8,000 億円)――韓国南西部に 4 つの新施設を建設
  • パッケージングセンター:81 兆ウォン(約 700 億円)――完成品化・梱包施設の拡張
  • 次世代チップ R&D:30 兆ウォン(約 260 億円)――15 年間の継続的な技術開発

この投資計画は李在明大統領の「地域経済成長」推進政策の一環で、韓国政府からの支援を受けている。

メモリ価格、2028年まで上昇圧力が続く

投資銀行 Jefferies Equity Research の分析によれば、メモリチップの価格上昇圧力は向こう 2~3 年間続くと予想される:

時期予測
Q3 202640~50%の価格上昇
Q4 2026追加で 30~40%の上昇
2027年さらに 40~45%の上昇
2028年以降新工場稼働により緩和へ

現在、Samsung と SK Hynix は世界 HBM 市場の約 80% を占有。この 2 社の投資拡大によって、競争環境が大きく変わる可能性は低く、むしろ当面はメモリ価格が高止まりする見通しが濃厚。

消費者向け機器への価格波及も

メモリチップの価格上昇は、AI データセンター運営企業だけでなく、一般消費者にも影響が及んでいる。Apple は MacBook と Mac の価格を引き上げており、他のパソコンメーカーも同様のコスト上昇圧力にさらされている。

スマートフォンからノートパソコンまで、幅広い電子機器にメモリチップが使われるため、今後数年間は製品価格の上昇トレンドが続く可能性が高い。

韓国勢の戦略的優位性

この投資計画は、AI 時代における韓国テック産業の戦略的重要性を浮き彫りにしている。かつてスマートフォン時代に競争力を失った Samsung も、メモリチップ供給という新しい競争軸では絶対的な優位性を保持。2028年にかけて、この優位性がどこまで持続するのか――業界全体の注目が集まっている。