導入 — 朝の“メッセージの滝”に直面する医師たち

ラテンアメリカ(LatAm)はWhatsAppを診療連絡の主軸に使うことが多い地域です。LatAmはラテンアメリカの略称です。朝になると患者からのメッセージが一斉に押し寄せ、返信が追いつかない――そんな光景は珍しくありません。電話や対面と違って、同じ話題が何度も届いたり、重要な連絡が埋もれたりします。現場では診療対応と事務作業が混在し、負荷が集中しがちです。

WhatsAppの波にAIはどう応えるのか

この混乱を受けて、Leona Healthというスタートアップが動き出しました。創業者にはUber Eats出身のメンバーも含まれます。彼らはWhatsApp上の患者メッセージを管理する「AIコパイロット」を開発しています。AIコパイロットとは、医師の作業を補助する人工知能のことで、振り分けや返信の下書きを提示するなど共働する機能を指します。

資金調達と狙い

Leona Healthはアーリーステージとして、a16z(アンドリーセン・ホロウィッツの略称)から約1,400万ドルの資金を獲得しました。これにより開発と現場導入を一気に進める計画です。資金は主に、誤案内を防ぐための検証体制と、現地ワークフローに合わせたカスタマイズに充てられる見込みです。

AIコパイロットは現場で何をするのか

具体的には、メッセージの自動振り分け、返信候補の生成、定型的な事務処理の自動化が中心です。たとえば薬の処方確認や予約変更など、ルール化できるやり取りはAIが下書きを用意します。医師は提案を確認して承認するだけで済む場面が増え、時間の節約につながります。

変化がもたらす影響

医師や事務スタッフの業務分担は変わります。良い意味では応答が早くなり、患者にも一貫した対応が期待できます。一方で、データ管理やプライバシーの扱いは重要な課題です。現場では研修や運用ルールの整備、医師と事務の協働を促すガバナンスが必要になります。

注意すべき現実的なリスク

AIの誤回答や過誤案内は許容できません。そこでLeona Healthは初期運用で厳格な検証と継続監視を重視します。また、患者の同意取得、オフラインでのバックアップ、現地規制への準拠といった実務的対策も不可欠です。技術だけで解決するのではなく、人の監督と組み合わせることが成功の鍵です。

まとめ — 技術と現場の“共奏”が問われる

WhatsAppに頼る医療現場にとって、AIは救いの手にもなり得ます。Leona Healthの取り組みは、混雑したチャットを整理し、医師の時間を取り戻す挑戦です。ただし技術的有効性だけでなく、倫理・法的課題や現場の受け入れも同時に解く必要があります。段階的な導入と現地に根ざした運用設計が、普及の決め手になるでしょう。

最後にひと言。チャットの“滝”をせき止めるには、優れたダム(技術)と、そこに住む人々の知恵(運用)が両方必要なのです。