オンラインで買い物をしていて「似合う服が見つからない」と感じたことはありませんか?

ASOSはそんな迷いに応えるべく、AI(人工知能)を使ったスタイリング機能を軸に、売上回復の勝負に出ています。AIは過去の閲覧や購入履歴、好みを学習して個々に合った提案をする技術です。これにより、単なる検索では見つけにくい一着と出会えることを目指しています。

売上の現状と戦略の転換

ASOSの直近の決算では、2025年8月31日までの12か月間で売上が前年同期比で約12%減少しました。これを受け、同社は過度なディスカウント(値引き)を見直す方針に転じています。

値引きを減らす代わりに注力しているのが、AIによる購買体験の向上です。スタイリング提案の精度を上げることで、ユーザーの滞在時間と購入率を高め、自然なリピートを促そうという狙いです。

AIスタイリストって何が違うの?

AIスタイリストは、単なる検索結果の羅列ではありません。ユーザーの好みを学んで似合うコーデを提案します。たとえば「普段はカジュアルだけど、たまにきれいめも着たい」というニーズにも応じられるようになります。

比喩を使えば、店員さんがあなたの好みを覚えてくれて、ちょうど良い服を勧めてくれるような仕組みです。オンラインでこの体験が再現できれば、迷いが減り購入に至りやすくなります。

返品とディスカウントの扱い

ASOSは返品によるコストと物流負担を課題と認識しています。過剰な値引きは短期の売上を作る一方、長期的な収益性を圧迫します。そこで値引きを抑えつつ、返品率を下げる工夫が求められています。

AI提案は返品抑制にも寄与する可能性があります。サイズや好みが合った商品を最初に提示できれば、返品が減るからです。ただし、現時点で効果は確定しておらず、検証が続きます。

市場と投資家の視点

Cityのアナリストは、来年も売上が低下する可能性を指摘しています。見方は分かれますが、AIスタイリストの導入と値引き戦略の見直しは、回復の重要なカギになると見られています。投資家の関心も高まっている状況です。

消費者への影響と期待

消費者にとって期待できるのは、手間の少ない買い物体験とより自分に合った提案です。価格と利便性のバランスが取れれば、満足度は上がります。一方、値引き縮小が価格感度の高い顧客にどう影響するかは注視が必要です。

今後の展望と注意点

短期的には、過度な価格引き下げを避けつつ、AI提案の魅力を高めることが重要です。長期的には返品抑制と価格戦略のバランス、そしてAIの実効性が回復の分岐点になります。

ASOSの挑戦は、オンラインファッション業界の“接客”をどうデジタル化するかを問う実験でもあります。成功すれば、買い物の迷いが減り、ブランドと顧客の関係が深まるかもしれません。注目していきたいですね。