BBVAの2万超カスタムGPTで変わる働き方
BBVAは社内向けに2万超のカスタムGPTを展開し、従業員一人当たり週数時間の削減や一部で最大80%の効率化を報告しましたが、運用とガバナンスが今後の鍵です。
銀行の社内で「2万個ものGPT」が動いている──この話、少し信じがたいかもしれません。
でもスペインの大手銀行BBVAは、本気でChatGPT Enterpriseを使い、社内向けに2万を超えるCustom GPT(業務に合わせて設定したカスタムAIツール)を配備しました。
読み進めれば、現場で何が変わりつつあるのか、具体例と注意点が見えてきます。
BBVAは何をやったのか
BBVAはChatGPT Enterpriseを導入しました。ChatGPT Enterpriseは企業向けのサービスで、データ管理やセキュリティ機能が強化されています。Custom GPTとは、業務ごとに応答や手順を最適化したテンプレートのことです。これを20,000以上作り、従業員一人あたり週に数時間の作業削減を報告しています。対象の作業では最大80%の効率化も観測されたとされています。
何が狙いで、どんな効果が期待できるのか
狙いは単純です。反復的な作業を機械に任せて、人的リソースをより価値ある業務へ回すこと。Custom GPTを用意すれば、部署ごとに最適化された支援が短期間で提供できます。例えば、定型レポートの自動化や、内部問い合わせの即時回答、契約書チェックの補助などです。時間が生まれれば、顧客対応や分析に注力できます。
20,000超のGPTは現場で何をするのか
イメージとしては「職場ごとの専用道具箱」です。営業チームにはトークスクリプト、法務には契約チェックのテンプレ、サポートにはFAQ応答のテンプレが入っています。これにより属人化が減り、業務の均質化が進みます。ただし、道具が増えれば「どれが最新か」「品質はどうか」といった管理が必要になります。
“最大80%の効率化”はどう受け取るべきか
この数字は魅力的ですが、注意も必要です。多くの場合、特定のタスクに対する相対的な時間短縮を示すものです。全業務で一律に80%短縮されるわけではありません。指標の定義や測定範囲を確認しないと過大評価になりがちです。実証された領域には資源を集中し、そうでない領域は別の改善策を検討する、といった柔軟な運用が大切です。
導入を広げる際の現実的な課題
大規模導入で出てくる課題は明らかです。モデルとデータのガバナンス、品質管理、セキュリティ、プライバシー、そして利用者のスキルです。特に金融業界では顧客データの扱いと規制順守が最優先です。外部サービスを使う際の監査可能性や説明責任も重要になります。現実的には段階的な展開と、レビュー体制の整備が鍵になります。
なぜこれが重要なのか
BBVAの事例は、AIが実験段階を抜けて日常業務に浸透し始めたことを示しています。銀行だけでなく、多くの企業で業務設計や人材配置の見直しが求められるでしょう。導入の成功は、技術そのものよりも「運用力」によって左右されます。評価・ガバナンス・スキル育成の三点セットが肝心です。
最後に一言。技術は道具です。どの道具を、どう使うかで結果は大きく変わります。BBVAの挑戦は始まりにすぎませんが、働き方を問い直す良いきっかけになるはずです。あなたの職場でも、専用の“小さな道具箱”を作る時が来ているかもしれません。