CyberAgent が ChatGPT Enterprise で93%採用率を達成——強制なしで企業全体に定着
CyberAgent は ChatGPT Enterprise と Codex を基盤に、広告・メディア・ゲーム事業の生産性を向上させた。強制しない文化の下、月間アクティブユーザー率93%という高い採用率を実現。OpenAI のトレーニング支援と継続的な文化醸成が成功の鍵。
CyberAgent は、インターネット広告・メディア・IP・ゲーム事業を展開する日本の大手インターネット企業である。OpenAI が公開した事例レポートによれば、同社が ChatGPT Enterprise と Codex を採用してから、月間アクティブユーザー率は93%に達し、企業全体での AI 活用が加速している。
「強制しない文化」で得た93%の高採用率
CyberAgent には、特定のツールをトップダウンで一律に強制しない文化がある。ChatGPT Enterprise も例外ではなく、各チーム・部署・子会社が目的に応じて他のツールと比較しながら判断して導入を進めた。それでもなお、現在はほぼ全ての部署で利用され、月間アクティブユーザー率は93%という数値を記録している。
この高い採用率の背景にあるのは、社内全体での AI 活用文化の醸成と、OpenAI による継続的なトレーニング支援である。文化面では、プロンプトや成功事例などのナレッジ共有に加え、社内での AI ツール利用状況を「ゲーム性のある」ランキング形式で可視化することで、前向きな活用を促進している。(このランキングデータは個人が自身のデータのみをチェックでき、評価には利用されない)
セキュリティ体制で現場の不安を解消
ChatGPT Enterprise の導入以前、CyberAgent では部署や社員ごとに ChatGPT を使用しており、ノウハウ共有や会社としての一元的な管理ができていなかった。AI の業務活用では「どこまで情報を入れてよいか」が曖昧になりやすく、この不確実性が利用の阻害要因になりやすい。
CyberAgent は企業向けの管理機能を備えた ChatGPT Enterprise を導入することで、この問題を解決した。ChatGPT Enterprise では契約・設定・運用ルールのもとで入力データの取り扱いを管理でき、企業向けのセキュリティ機能とアクセス管理機能を備えている。加えて、機密情報を取り扱う際のガイドラインも社内で整備し、安全な利用を推進している。
グループ IT 推進本部の鷹雄健氏は、ChatGPT Enterprise の導入によって「現場が迷わずに AI を使える状態を作れた」と述べている。セキュリティ体制の確立が、組織全体での AI 活用を促進する必須要件であることが明らかになった。
Codex による開発プロセスの最適化
Codex の活用は、特に実装段階だけに限定されていない。設計案の検討やレビュー、評価といった上流工程でも重点的に活用されている。CyberAgent の事例では、以下の3つが Codex の主要なユースケースとされている:
- 設計案の検討、レビュー、評価を Codex に任せる
- コードレビューで改善案を複数提示させ、採用判断する
- 知識ドキュメント(例: エージェント設計書など)を整備し、エージェントが文脈を理解できる状態を作る
Codex の活用による効果は複合的である。設計フェーズで複数の観点から評価された提案が得られるため「設計の質が上がった」。実装前に設計の合意が取りやすくなるため「手戻りが減った」。提案根拠が明確になるため「人の意思決定が速くなった」。
Codex は開発者だけに限定されず、仕様作成やモック作成など開発者以外の職種でも活用され始めている。さらに注目されるのは、ChatGPT Enterprise 自体の利用状況を可視化するランキングシステムも、Codex を活用して社内で開発されたツールだということである。
継続的なトレーニングと学習の場
OpenAI が開催した勉強会やトレーニングは、CyberAgent での ChatGPT Enterprise 定着において大きな役割を果たした。告知から開催まで数日というケースが多い中でも、10回以上にわたるセッションには毎回100名以上が参加した。
提供されたトレーニングは、初心者向けの「ChatGPT Enterprise 101」から、カスタム GPT のワークショップ、Codex のハンズオン、社内ハッカソンまで、職種や成熟度に合わせて設計された。こうした継続的な学びの場が、社員の「AI を使った最初の成功体験」を支え、組織全体での活用を加速させた。
AI を「導入」から「定着」へ
CyberAgent の事例は、エンタープライズ企業における AI 導入が、単なる「ツール導入」ではなく「業務設計の変革」である必要性を示している。強制しない文化、セキュリティ体制の確立、継続的なトレーニング、そして成功事例の共有——これらの要素が揃うことで、初めて AI は企業全体に「定着」し、生産性向上へと結びつく。