ダウンロードできる“恒久的な世界”がやってくる

突然ですが、あなたは作った世界を丸ごと持ち出せたら嬉しいですか?
World Labsが発表した「Marble」は、まさにその夢を目指す製品です。従来の「毎回その場で生成する世界」とは違い、恒久的に保存・エクスポートできる3Dワールドを作ることを目的としています。

Marbleの特徴をざっくり説明すると

  • 恒久的にダウンロード可能な3D環境を生成します。
  • 出力形式はGaussian splats(ガウシアン・スプラッツ)メッシュ動画に対応すると伝えられています。
  • World Labsは出力のモーフィングや不整合が少ないと主張しています。

ここで用語を一つだけ補足します。Gaussian splatsは、小さな“ぼかした点”(ガウス分布のブロブ)を積み重ねて画像や形状を表現する手法で、フォトリアルさと軽さのバランスを取れる点が特徴です。

なぜ注目なのか — オンザフライ生成との違い

生成型ワールドは大きく二手に分かれます。

  • ランタイムで都度生成する方式(オンザフライ)

    • その場で世界を即座に作れる。探索や柔軟な体験に向く。
    • GoogleのGenieや一部のリアルタイムモデルがこの方向です。
  • 恒久的にエクスポートできる方式

    • 作った世界を保存して別のツールに持ち出せる。制作者や制作現場に向く。
    • Marbleはこの路線を選んでいます。

たとえば、オンザフライは紙にその場で落書きする感覚です。気軽に試せますが、同じ絵を厳密に再現するのは難しい。対してMarbleは、完成した彫刻を鋳型に取ってコピーするようなイメージです。繰り返し使えて、一貫性があります。

技術面のポイントと疑問

Marbleがどのように恒久的な表現を実現するか、詳細なアルゴリズムやパイプラインはまだ公開されていません。注目点は次の通りです。

  • Gaussian splatsを出力に含めることは興味深い選択です。軽量で高品質を狙える一方、編集や他フォーマットとの互換性に課題が出る可能性もあります。
  • 実際の出力サンプルやスケール性能、既存パイプライン(ゲームエンジンやCGツール)との相性は独立検証が必要です。
  • World Labs自身のリアルタイムモデル「RTFM」はオンザフライを想定しており、Marbleはあえて恒久資産を重視するという方針の差が見えます。

ビジネス上の意味合い

Marbleが同社初の商用製品である点も大きなニュースです。製品化は市場での立ち位置を確立し、収益化を目指す動きです。ただし、価格やライセンス、ターゲット顧客、競合との差別化がどうなるかで受容性は変わります。

プロの制作者やスタジオは「同じ資産を何度でも再利用できる」ことを重視します。個人や研究者は「その場で多様な世界を試せる」ことを好むでしょう。用途によって選択肢が分かれるのは当然です。

今後注目すべき3点

  1. 実運用での安定性:出力が本当に一貫しているか。
  2. 互換性:Gaussian splatsやメッシュが既存ワークフローで使えるか。
  3. 採用と商用戦略:価格やライセンス次第で市場の反応は変わる。

これらはWorld Labsの主張を裏付ける独立検証や実利用例の公開で明らかになります。

最後に — 何が変わるのか

Marbleの登場は、生成型ワールド競争に**“保存できる世界”という選択肢**を持ち込みました。用途に応じて“即興”と“資産化”の間で住み分けが進むでしょう。

今後は各社の技術差別化と導入事例が鍵になります。どの世界を選ぶかは、あなたが求める「自由さ」か「再現性」かで決まります。どちらが勝つかはまだ分かりません。だが選択肢が増えるのは、創作側にとって素直に嬉しい変化です。