Microsoftが2026年9月の月例パッチ「Patch Tuesday」で、過去最多となる972件の脆弱性を修正した。うち112件は緊急(critical)判定で、Edgeに組み込まれたChromiumのポーティング分を含めると997件に達する。わずか2カ月前には570件、先月は620件と、修正件数の記録更新が連続している。

脆弱性発見の急増を後押しするAI

Zero Day Initiativeの研究者Dustin Childs氏は、この急増ぶりを「新常態(new normal)」と呼ぶ。2026年に入ってからMicrosoftが修正した脆弱性は既に2760件に達し、前年の2倍以上のペースだ。このまま推移すれば、2023年から2025年までの3年間の合計を上回る見込みだという。

背景にあるのがAIを使った脆弱性発見の急速な普及だ。今月の修正には、SQL Server関連だけで60件のSQL Copilot経由の権限昇格の脆弱性が含まれ、そのうちCVE-2026-65669はユーザーがSQL Copilotに指示を送信した際に悪用される。AIアシスタントの機能そのものが攻撃対象になっている実例だ。Ars Technicaによれば、Mozillaも5月、自社のAIツール「Mythos」を使った調査で過去最多271件の脆弱性を発見し、誤検知はほとんどなかったと報告している。

業界が交わした公開書簡

2週間前には、OpenAI、Anthropic、Amazon Web Services、Google、Microsoftを含む100社以上の企業・組織が連名で公開書簡を発表し、AIを使った攻撃が既知の脆弱性を悪用する「津波」が迫っているとして、パッチ適用までの猶予期間が急速に狭まっていると警告した。今回の記録的な修正件数は、その警告に対する業界側の対応とも読める。

今月の修正には、Windows更新サービスとWindows Advanced Local Procedureに存在する2件のゼロデイ脆弱性(CVE-2026-81963、CVE-2026-85880)も含まれる。悪用の主体や手口については公開情報がまだない。Childs氏は、Exchange Serverの脆弱性(CVE-2026-55007、悪意あるVisio添付ファイル付きメール1通で攻撃者が実行コードを得られる)や、深刻度9.8のRemote Desktop Services向け脆弱性(CVE-2026-69525)などを重大な事例として挙げている。同氏はワーム化が可能な脆弱性を20件数えた時点で数えるのをやめたと明かしており、これらはユーザー操作なしに端末間で自己増殖しうる。

攻防両面でのAI活用が焦点に

AI支援の脆弱性発見には懐疑論もある。LLMを使う際のコストや誤検知の多さを問題視する声に加え、AIエンジンの開発に巨額を投じてきた企業が、その同じAIで脆弱性を発見・修正することで投資回収を図っているのではという指摘もある。一方で、Mozillaの事例のように誤検知が少ない高精度な発見も報告されており、Ars Technicaは脆弱性発見が新しい局面に入った可能性を軽視すべきではないと指摘する。

セキュリティ担当者にとっては、AIが攻撃側・防御側の双方で脆弱性発見のスピードを引き上げている以上、パッチ適用のリードタイムをこれまで以上に短縮する必要に迫られている。今回の972件という数字は、単なる記録更新ではなく、AI時代のセキュリティ運用の負荷そのものを示す数値といえる。