台湾当局が重大な捜査に乗り出した。データセンター企業 Super Micro Computer と、その地元パートナー企業らを対象に強制捜査を実施。Nvidia の高性能 AI チップを不正に中国へ輸出しようとした疑いで、米国の対中輸出規制に歩調を合わせた規制強化の動きが明確になった。

強制捜査の規模と背景

台湾当局は、Super Micro Computer の台湾オフィスを含む複数の拠点を捜索した。対象となったのは、データセンターオペレーター Chief Telecom や Super Micro の流通パートナー Albatron Technology など、関連企業 3 社と 6 人の個人宅である。

捜査は 5 月に逮捕された 3 人から始まった。彼らは輸出許可書の偽造罪に問われており、Nvidia の AI チップを日本経由で中国に密輸しようとしたとされている。日本を経由する迂回ルートは、米国の直接的な対中禁輸を回避するための典型的な手口だ。

Super Micro Computer の株価は捜査発表後 8% 下落した。同社は声明で「台湾当局と全面的に協力している」と述べているが、同社の創設者が既に起訴されている可能性も示唆されている。

台湾の規制姿勢の転換

注目すべきは、台湾がこの時期に強制捜査を公開したという点だ。現在、台湾は AI チップの対中輸出を法律では禁止していないが、米国の輸出規制との歩調を合わせる動きを強めている。

米国は 2023 年以降、Nvidia の H100・H200 といった高性能 AI チップを中国へ販売することを厳しく制限している。その結果、迂回ルートが増加。台湾、日本、シンガポール経由での密輸が国家安全保障の脅威として認識されるようになった。

今回の強制捜査は、台湾が米国の規制体制に主体的に参加する姿勢を示すものだ。

供給チェーンと業界への影響

Super Micro はデータセンター業界の重要なプレイヤーであり、同社の不透明性は調達企業にリスクをもたらす。特に中国関連の取引がある場合、企業は今後、パートナー企業のコンプライアンス体制をより厳格に監視する必要が生じる。

また、この捜査は以下の 3 点を示唆している:

  1. 迂回ルートの検察化 — 日本やシンガポール経由のルートが単なる商習慣ではなく、犯罪捜査の対象となることが明確になった
  2. 地域連携の強化 — 台湾が米国の規制に同期する流れは、日本や韓国といった民主主義陣営全体に波及する可能性がある
  3. 供給チェーンの分断 — 今後、グローバル半導体企業は「米国・同盟国」と「中国」で完全に分かれた供給ルートを構築せざるを得なくなる

この動きは、単なる取締りではなく、民主主義陣営と中国を隔てるデジタル鉄のカーテンの構築が現実化しつつあることを示しているのだ。

アップデート:捜査が正式起訴に発展、Nvidia台湾支社マネージャーら9人を起訴

台湾の検察は8月24日、Nvidia台湾支社のシニアマネージャー(張姓)を含む9人を、Nvidia製Blackwell世代のB300 GPUを搭載した高性能AIサーバーの中国への不正輸出に関与した容疑で正式に起訴した。5月の逮捕・6月の強制捜査から段階が進み、台湾として初めてとなるAIアクセラレーターの闇取引に対する本格的な摘発事例となった。

起訴内容によれば、容疑者らは背任罪・文書偽造罪に問われ、うち3人は証券取引法上の加重背任罪でも起訴された。判明している取引は3回にわたり、130台・64台・64台のサーバーが対象となった。このうち50台はインドネシア経由で、8台は日本経由で香港を通じて中国へ渡ったとされ、残る56台は台湾国内で当局に押収された。不正な再販売による利益は2120万ドル以上、横領資産は台湾ドルで約3916万元(日本円で約1億9000万円相当)にのぼるという。

検察は「核心人物」と位置づける張氏に禁錮5年を求刑する方針で、他の被告についても違法輸出や横領の罪で最大6年の求刑を検討している。1人は逃亡中で身柄を確保できていない。

今回の起訴は、5月の逮捕・6月の強制捜査段階では明らかでなかった密輸の全体像──関与した人数、扱われたチップの世代(H100・H200ではなくBlackwell世代のB300)、迂回輸出のルート、被害額──を具体的に示した点で重要だ。台湾当局が単なる捜査にとどまらず刑事訴追にまで踏み込んだことは、米国の対中輸出規制に同期する姿勢をより明確にしたといえる。