政府推計は「ほぼゼロ排出」を前提

英国の科学・イノベーション技術省(DSIT)は先週、AI 革命を支える新規データセンターからの炭素排出を「最小限」と見積もった。2035 年までに 11.2GW の AI 関連計算能力から生まれる排出は、わずか 0.142 メガトン CO₂(MtCO₂)にとどまるという推計だ。

この数字が示唆するのは、データセンター向けの電力供給がほぼ完全に脱炭素化されるべきだということ。1 キロワット時あたりの排出をわずか 2g 以下に抑える必要がある。

実態は「数百倍高い」可能性

だがこの推計は、現実離れしている。Carbon Brief による詳細分析が指摘した通り、もしこれらのデータセンターがガス火力で発電した電力の大部分を使った場合、排出量は政府推計の数百倍に跳ね上がりかねない。

実際の排出量は最大で 120 メガトン CO₂ を超える可能性まで指摘されている。これはデンマーク全国の年間排出量に匹敵する規模だ。

再生可能エネルギー確保が現実的か

政府が想定する「ほぼ 100% 再生可能」というシナリオは、現在の英国の電力網では物理的に困難だ。風力・太陽光は季節変動が大きく、安定供給には多大な蓄電容量が必要。その投資と実装に要する時間は、政府推計に反映されていない。

「AI 革命 vs. 気候目標」の根本的矛盾

英国政府は脱炭素 2050 達成を公約としながら、同時に AI インフラの急速導入を推し進めている。この二律背反は、深い検討なしに見過ごされてきた。

新規データセンターが次々と建設されれば、ガス火力への依存は当面避けられない。結果として、英国の気候目標は形骸化する可能性がある。

今後の焦点:透明性と選択肢

業界関係者と政策立案者に求められるのは、データセンター排出を正直に公表し、気候目標との整合性をどう実現するかを議論することだ。楽観的な推計に頼るのではなく、複数シナリオで現実的な検討が必要になっている。