Apollo Global Management の首席経済学者 Torsten Slok は、AI が技術セクター外で企業の利益率を押し上げている証拠がないと指摘している。市場は AI 企業による急速な収益成長を織り込んでいるが、実際のキャッシュフローは期待を大きく下回る可能性があるという警告だ。

規制業種での遅延リスク

ヘルスケア、銀行、エネルギー、医薬品、製造業などの規制産業では、AI による生産性向上が「市場が現在予想するよりもはるかに長期化する」と Slok は述べている。これらの業界では単なる技術導入だけでは足りず、大規模なプロセス改革とプライバシー要件への適応が不可欠である。その結果、Wall Street が想定する「5ヶ月」ではなく「5年以上」かかる可能性があるのだ。

測定不可能な生産性向上

知識労働では、個々の従業員がより生産的になっていても、その成果を測定することが困難という構造的問題がある。企業の経営層が対策を講じられず、生産性向上は貸借対照表に反映されず、日常業務に吸収されてしまう。つまり、実際には AI が導入されて効果が出ていても、企業の決算数字には現れないのだ。

AI 株の再評価リスク

Slok の警告は、市場の楽観的シナリオとの大きな乖離を示唆している。規制業種での利益化が5年以上遅れれば、現在組み込まれている AI 企業の高い評価バリュエーションは大幅な再評価に直面する可能性がある。投資家は、AI テクノロジーそのものの成長と、それが企業の実際の利益に変わるまでの時間差を、より慎重に見つめ直す必要があるだろう。