トランプ政権の Government Efficiency Department(DOGE)が AI を活用して住宅政策を立案していたことが明らかになった。これ自体は珍しくないが、問題はその後の展開だ。政策立案における AI の役割を明らかにするために公開情報請求(FOIA)が出され、HUD(Department of Housing and Urban Development)に対して関連文書の開示が求められた。しかし HUD は請求に応じず、実在しない「特権」を理由に文書開示を拒否している。

AI による政策立案の「見えない化」

DOGE による住宅政策への AI 導入は、政府の効率化を掲げる立場からは理に適った判断に見える。しかし問題は「市民が政策決定の過程を知る権利」がないまま、政策が人知れず形成されているという点だ。

AI が政策を「支援」するのか「決定」するのか、どの段階で人間の判断が入るのか、どのような学習データが使われたのかといった基本的な情報が、開示請求によっても得られない状態が続いている。

存在しない特権を盾に

HUD の対応がさらに問題視されている理由は、「特権が存在しない」とされながら、それを理由に開示を拒否している矛盾にある。これは情報の完全な隠蔽であり、民主的な説明責任の放棄を意味する。

政府機関が AI を用いるならば、その透明性は一層重要になるはずだ。とりわけ国民の生活に直結する住宅政策のような領域では、「どのように AI が使われたか」は、その政策の妥当性を判断するために不可欠な情報である。

民主主義の試金石

この事例は、米国をはじめ世界の政府が直面する課題を浮き彫りにする。AI が政策決定に組み込まれる時代において、透明性と説明責任をどのように確保するのかという問題は、もはや後回しにはできない段階に入っているのだ。