GPT-5.6・Claude・Grok 4.5 コーディング徹底比較:12モデルで4アプリを作らせてわかった使い分けの正解
12のAIモデルに4種類のアプリを作らせた大規模比較テストの結果をまとめる。Doom風3D迷路からルービックキューブまで、複雑なUIコードでどのモデルが勝ち、どのモデルが沈むのか。コスト・速度・品質を整理して「今日から使える選択肢」を提案する。
「AIにコードを書かせるのが当たり前になった」と感じている人は多いだろう。しかし、モデルが乱立する2026年においては「どのAIに頼めばいいか」という選択そのものが悩みの種になっている。GPT-5.6、Claude Fable 5、Grok 4.5 ——名前を見ただけでは差がわからない。
そこで TryAI が実施したのが、12モデルを横並びにした実践的なコーディング比較テストだ。4種類のアプリを各5回作らせ、成功率・コスト・速度を測定した。机上のベンチマーク数値ではなく「実際に動くアプリが生成できるか」という一点に絞った評価で、結果は思いのほか興味深いものになった。
どんな比較テストだったか
評価対象は計12モデル。GPT-5.6シリーズ(Sol/Terra/Luna)、GPT-5.5、Claude Opus 4.8、Claude Fable 5、Grok 4.5、Muse Spark 1.1、そしてオープンソース勢としてQwen 3.7、DeepSeek V4、Kimi K2.6、GLM-5.2が参加した。
タスクは以下の4種類。いずれも「ちょっと難しいUI開発」という設定だ。
- Doom風レイキャスター迷路 — WASD操作で歩き回れる3D迷路をひとつのHTMLファイルで生成する
- 3Dルービックキューブ — スクランブルと解法アニメーション付きのインタラクティブなキューブ
- 電卓アプリ — 演算子優先度を正確に処理し、UIも整ったもの
- コンウェイのライフゲーム — グリッド・再生/一時停止/ステップ機能付き
各モデルにプロンプトを5回投げ、「まともに動く成果物が生成されたか」を判定している。自動評価ではなく人の目で確認するという、手間はかかるが現実的な評価方法だ。
タスク別の結果:誰が強く、誰が沈んだか
Doom風レイキャスター迷路(難易度:高)
3Dグラフィックスをゼロから実装する難タスク。成功率は以下のとおり。
| モデル | 成功率 | コスト(平均) | 速度(平均) |
|---|---|---|---|
| Grok 4.5 | 5/5 | $0.27 | 62秒 |
| GPT-5.6 Sol | 5/5 | $1.35 | 120秒 |
| GPT-5.6 Luna | 5/5 | $0.15 | 23秒 |
| Claude Opus 4.8 | 4/5 | $0.54 | 48秒 |
| GPT-5.6 Terra | 3/5 | — | — |
| GLM-5.2 | 0/5 | — | — |
特筆すべきは Grok 4.5 の存在感だ。$0.27というコストでGPT-5.6 Solと同等の5/5を達成。GPT-5.6 Sol は1回あたり$1.35かかることを踏まえると、コストパフォーマンスでは Grok 4.5 が圧勝だった。
GPT-5.6 Luna は最速(23秒)で5/5を達成しており、「安く・速く・複雑なコードも書ける」という驚きの結果を出している。オープンソース勢は GLM-5.2 が0/5と完全に沈んだ。3Dグラフィックスの実装はまだフロンティアモデルとの差が大きい。
3Dルービックキューブ(難易度:高)
アニメーション・回転ロジック・インタラクションの三拍子が揃わないと動かない難タスク。
| モデル | 成功率 | コスト(平均) | 速度(平均) |
|---|---|---|---|
| Claude Fable 5 | 5/5 | $2.03 | 92秒 |
| GPT-5.6 Sol | 4/5 | $1.06 | 72秒 |
| GPT-5.6 Terra | 4/5 | — | — |
| GPT-5.5 | 4/5 | $1.36 | 136秒 |
| Grok 4.5 | 3/5 | $0.65 | 191秒 |
| GPT-5.6 Luna | 0/5 | — | — |
ここで顔を出したのが Claude Fable 5 の底力だ。5/5 の完璧スコアで、3Dオブジェクトの複雑な制御を確実に仕上げた。テスト実施者も「Fable 5の出力品質は際立っていた」と評している。
レイキャスターで全勝した GPT-5.6 Luna は、このタスクで0/5という真逆の結果になった。軽量・高速モデルはシンプルなコードでは頼りになるが、3Dロジックのような複雑な構造物には限界がある、ということを示している。
電卓アプリ(難易度:中)
一見シンプルだが、演算子優先度の実装を誤るとすぐに壊れる。
| モデル | 成功率 | コスト(平均) | 速度(平均) |
|---|---|---|---|
| Grok 4.5 | 5/5 | $0.37 | 110秒 |
| Claude Opus 4.8 | 5/5 | $0.46 | 35秒 |
| Claude Fable 5 | 5/5 | $1.22 | 48秒 |
| GPT-5.6 Luna | 5/5 | $0.11 | 16秒 |
4モデルが5/5を達成。この難易度では複数の選択肢が使えることがわかった。コスト最優先なら GPT-5.6 Luna($0.11)、速度も重視するなら Claude Opus 4.8(35秒)が光る。Claude の出力についてテスト実施者は「UIのスタイル感が個人的に好みだった」とも述べており、見た目の完成度でも Claude は高評価を得ている。
ライフゲーム(難易度:標準)
グリッドのアニメーションとゲームロジックが必要だが、前3タスクより実装の難度は低い。このタスクではオープンソース勢が存在感を示した。Qwen 3.7 が $0.04・11秒 という驚異のコストで完成させ、「シンプルなタスクならオープンソースで十分」という論点を補強した。
コスト・速度の全体像
簡単なテキスト応答(短答)での速度とコストも計測している。
| モデル | 応答速度中央値 | スループット | コスト/回答 |
|---|---|---|---|
| GPT-5.6 Luna | 1.0秒 | 97 tok/秒 | $0.001 |
| GPT-5.6 Terra | 1.5秒 | 62 tok/秒 | $0.001 |
| GPT-5.6 Sol | 1.8秒 | 45 tok/秒 | $0.003 |
| Grok 4.5 | 3.0秒 | 112 tok/秒 | $0.003 |
スループット(1秒あたりのトークン数)では Grok 4.5 が112 tok/秒でトップだが、応答開始まで3秒かかる。「最初の1文字が出るまでが遅い」という感覚は実際の使用感に影響する点だ。
何がわかったか:使い分けのガイドライン
今回のテストから導き出せる実践的な結論は、大きく3つに絞られる。
「難しいUIコード」には Grok 4.5 か Claude Fable 5
3D迷路や電卓のような中〜高難度のコーディングでは、Grok 4.5 が高い成功率を低コストで実現した。$0.27 〜 $0.37 でフロンティアモデルと互角の結果を出せるのは、コスト意識のある開発者には魅力的だ。
特に「正確さ」が求められる場面では Claude Fable 5 が強い。ルービックキューブで唯一の5/5を出したように、複雑なロジックを確実に仕上げる安定感がある。$2.03 というコストは高いが、「一発で動くものが欲しい」時の保険として機能する。
「とにかく速く・安く」なら GPT-5.6 Luna
中程度のタスクに限れば、GPT-5.6 Luna は$0.11・16秒という規格外のコスパを示した。毎回複雑な3Dグラフィックスを要求するわけでなければ、まず Luna を試して、うまくいかなかったらスケールアップするという戦略が合理的だ。
「単純なタスクの量産」はオープンソースを検討する価値あり
ライフゲームの例が示すように、ロジックが明確でコード量も少ないタスクではオープンソースモデルが競争力を持つ。API コストを下げたい場合、まずどの難易度に当てはまるかを判断することが第一歩になる。
まとめ
「高いモデルを使えば安心」という時代は終わりつつある。今回の比較が示したのは、タスクの複雑さに応じてモデルを使い分けることで、品質を落とさずコストを大幅に削減できるという現実だ。
Claude Fable 5 は複雑なコードの「確実性」で際立ち、Grok 4.5 はコスパで驚かせ、GPT-5.6 Luna は軽量タスクの速度で頭ひとつ抜けた。どのモデルが「最強」かではなく、何をさせるかによって答えが変わる——そういう状況に、2026年のAI開発者はいる。
自分のユースケースが「3Dルービックキューブ」に近いのか「電卓」に近いのかを見極めることが、賢いモデル選択の出発点だ。