ニューヨーク市が、公立学校における生成AIの利用方針を大きく転換する。中学生に相当する8年生(日本の中学2年生程度)までの生徒によるAI利用を全面禁止し、小学3年生までは授業中のノートパソコンやタブレット自体の使用も制限する。全米最大の学区である同市の技術方針は、他州の政策にも影響を与えると見られている。

「認知の放棄」への懸念

新方針は9月2日に発表され、来週から施行される。約90万人の生徒を抱える同学区でのこの転換の背景には、生成AIが子どもの精神面や認知発達に悪影響を及ぼすとの教師・保護者からの警告がある。研究者が「認知の放棄」と呼ぶ、思考をソフトウェアに委ねてしまう現象への懸念に加え、AI利用に伴う環境負荷への指摘も理由に挙げられている。

AI利用が許可されるのは高校(9年生以降)からで、それも技術そのものを学ぶ用途など限定的な範囲にとどまる。心理的サポートを提供する「AIコンパニオンチャットボット」も禁止対象に含まれる。教師についてはルールが緩く、授業準備や連絡文書の作成へのAI活用は認められるが、課題の採点にAIを使うことは禁じられる。

今年3月の枠組みが「甘すぎる」と批判され転換

同市教育局は今年3月、AIの利用可否を信号機になぞらえて分類する枠組みを公表していた。この枠組みは調査・探求・創作プロジェクトへのAI活用を認める内容だったが、多くの保護者や教師から「甘すぎる」との批判が噴出。教育局長のKamar Samuels氏は、伝え方について「的を外した」と釈明し、寄せられた意見を今後の方針に反映すると述べている。

なお、ニューヨーク市は2023年にもChatGPTの学校での利用を一度禁止したが、1年足らずで撤回した経緯がある。今回はその反省も踏まえ、教師・議員・専門家・組合代表からなるタスクフォースを新設し、来年4月をめどにより包括的な「ガイドブック」をまとめる計画だ。

現場での運用は道半ば

教育局は、授業中の画面利用時間について中学生で45分、小学生で30分を上限とするよう推奨している。ただし、AI利用の多くは学校外で発生するため、実際にどう利用実態を把握・監視するかという課題は残ったままだ。

米国最大の学区が下した「AI利用は高校からのみ」という判断は、日本を含む各国の教育現場がAIとどう向き合うかを考えるうえでも一つの参考材料になる。技術の可能性と発達段階への配慮をどう両立させるかという問いに、明確な答えはまだない。