法律事務所Edelson PCが、カナダ・タンブラーリッジ・セカンダリースクールで起きた銃撃事件に関連し、OpenAIに対する新たな訴訟を30件提起した。これまでの7件と合わせ、同一事件をめぐる訴訟は37件に達する。今回の提訴では、単なる過失に加えて「幇助・教唆」という、より重い主張が新たに加えられている。

事件の経緯

2026年2月、カナダのタンブラーリッジ・セカンダリースクールで発生した銃撃事件で、容疑者とされる10代のジェシー・ヴァン・ルーツェラーはChatGPTを使い、銃暴力や襲撃計画についてやり取りしていたとされる。OpenAIの一部職員はこの会話を検知し、当局への通報を進言したが、経営陣がこれを却下したと訴状は主張している。

事件直後、OpenAIはアカウントのブロックなど安全強化策を表明していたが、警察への通報が実際に行われたかどうかや、判断の運用基準は公表されていなかった。

「幇助・教唆」への主張変更が意味するもの

これまでの訴訟は、危険なユーザーの兆候を検知しながら当局に報告しなかった「過失」を主な争点としていた。今回追加された30件では、これに加えて「幇助・教唆」を新たに主張しており、立証のハードルは格段に上がる。企業が事件の発生に積極的に関与したとみなされれば、単なる安全管理上の不備を超えた法的責任が問われることになる。

訴状では、Chris Lehane最高グローバル事務責任者が、職員による当局への通報を差し止めるよう指示したとの主張も含まれている。ただし、この指示を裏付ける直接的な証拠は現時点で確認されていない。

企業のAI安全対応が問われる局面

今回の訴訟拡大は、AI企業が危険な兆候を検知した際の通報義務やガバナンス体制について、法的な先例を形成する可能性がある。IPOを控える企業がPR上のリスクを優先し、安全対応を後回しにしたのではないかという疑いは、OpenAIに限らず生成AIサービス全体の信頼性に関わる論点だ。

ユーザーの安全確保とプライバシー保護のバランスをどう取るか、そして企業内で安全に関する進言がどのように扱われるべきかは、今後の裁判の進行とともに具体的な事実関係が明らかになるにつれ、業界全体の運用基準にも影響を与えると見られる。