OpenAI が新機能「Computer History」を発表した。ユーザーのデスクトップアクティビティ(クリック・キーストローク・アプリ切り替え)を記録し、ChatGPT が検索可能なタイムラインに変換する機能である。利便性とセキュリティのバランスが課題となりそうだ。

クリック・キーストロークを自動記録

Computer History は、従来の「Chronicle」と異なり、スクリーンショットではなくイベントベースの記録を採用している。

記録対象(macOS のアクセシビリティシステム経由):

  • マウスクリック・キーストロークの内容
  • キーボードショートカット
  • アプリケーション切り替え

これらのアクティビティが Markdown 形式でローカルファイルシステムに平文で保存 される。OpenAI は「暗号化なし」「同一ユーザーアカウント下のプログラムがアクセス可能」と明示している。

ChatGPT が記録を「検索可能なメモリ」に変換

ChatGPT はこの記録から繰り返しパターンを検出し、自動化可能な「Skill」として提案できる。ユーザーはコード編集なしに、日常業務の手順をテンプレート化・再利用可能にできるという狙いだ。

実用例

  • 最近編集したドキュメント検索:タイムスタンプから「先週編集した〇〇レポート」を素早く発見
  • スタンドアップ会議の要約自動生成:本日のアクティビティログから会議で報告すべき進捗を自動抽出
  • 反復タスクの自動化案内:毎日同じ手順を繰り返している場合、自動化スクリプトを提案

セキュリティ・プライバシーの懸念

1. プロンプトインジェクション

Webページに埋め込まれた悪意のある指示が、ユーザーが訪問した際に Computer History のデータに作用する可能性がある。例えば、「フォームに自動入力する」などの偽の指示が挿入されるリスク。

2. 未暗号化ローカル保存

メモリが Markdown で平文保存されるため、同一 macOS ユーザーアカウント下のマルウェアやプログラムが直接アクセス可能。医療情報・財務データ・パスワード入力情報が記録されている可能性がある。

3. 通信アプリ使用時の法的問題

Slack・Teams などのプライベート通信内容も記録される。そのデータが ChatGPT に送信される際の同意・規制遵守が不明瞭。

4. 地理的制限

プライバシー規制が厳しい欧州経済地域・スイス・英国では、まだ利用不可。GDPR や類似の規制への準拠に時間がかかることが示唆されている。

OpenAI のリスク軽減策

  • 明示的オプトイン:管理者・ユーザーの両方が同意する必要あり
  • 含/除外リスト設定:アプリ・Web サイト単位で記録対象を制御可能
  • 一時停止・再開機能:ユーザーがいつでも記録を停止・再開可能
  • ローカル保存:データは Mac に留まり(北米リージョンを除く)、OpenAI のサーバーに自動送信されない

業界への示唆

Computer History は「AI がユーザーの行動を継続的に観察・分析・自動化する」時代への入口と言える。利便性は明らかだが、ユーザーが意識せずにデータが蓄積・悪用される リスクも拡大する。

企業・組織が Computer History を導入する場合、同意書・プライバシーポリシーの整備が急務となるだろう。