Tencent が、スマートフォンで動作する軽量 AI 翻訳モデル「Hy-MT1.5-1.8B-1.25bit」をオープンウェイト モデルとして公開した。わずか 440MB のファイルサイズで 33 言語以上に対応し、Google Translate に匹敵する翻訳精度を実現。オフライン環境での利用を想定した設計により、プライバシー保護と低遅延を両立させている。

劇的な圧縮――GB からMB へ

通常、翻訳モデルは数GB のサイズを必要とするが、Tencent は 1.25 bits per parameter という極度の量子化(quantization)圧縮技術を採用。元のモデルサイズ 3.3GB を 440MB まで圧縮しながら、翻訳品質を維持。

前世代の 1.67 ビット圧縮版と比べてさらに 25% 軽量化し、推論速度も 10% 高速化している。この革新により、スマートフォンという制限されたリソース環境での実行が初めて現実的になった。

33言語の包括的対応

対応言語は 33 言語以上。ドイツ語、英語、中国語(標準中国語)、日本語、フランス語、チベット語、モンゴル語を含む。また、5 つの方言サポートと 1,056 の翻訳方向 をカバーしており、主要言語だけでなくニッチな言語ペアにも対応している。

商用サービスと同等の精度

テストデータでは、このモデルは「商用サービスおよび規模の大きなモデルと同等(matches commercial services and much larger models)」と評価されている。国際機械翻訳コンペティション(International Machine Translation Competition)での 30 度の優勝実績が、この品質達成を証明している。

数百ギガバイト規模のモデルと同じレベルの翻訳精度を、わずか 440MB で実現した点は、AI モデル圧縮技術における大きなマイルストーン。

プライバシーとオフライン性

スマートフォンにダウンロード後、インターネット接続なしで翻訳処理を完結。ユーザーの会話内容やテキストがサーバーに送信されないため、プライバシー上の利点 が大きい。通信遅延もなく、飛行機モードでも利用可能。

Android 向けのデモアプリケーションも提供されており、ユーザーは直ちに試用できる。

オープンウェイト戦略の意義

このモデルのオープンウェイト公開により、開発者やリサーチャーが改善・カスタマイズを行える環境が整備される。特に言語モデルの効率化は、グローバル市場において競争優位性を持つ技術分野。Tencent のこの戦略は、中国の AI インダストリーが世界水準の圧縮技術を保有していることを示す重要なシグナルとなっている。

スマートフォンAI の実用化が急速に進む中、440MB という限界を超えた軽量モデルの出現は、エッジコンピューティング時代の到来を加速させるだろう。