Amazonが、Metaの買い物代行AIエージェント「Muse」をAmazon.com上での購入行為からブロックした。ユーザーがMuse経由でAmazonにアクセスすると「許可されていないAIエージェントによるアクセスは利用規約違反」とのポップアップが表示される。Museは9月8日の発表からわずか2週間足らずでの締め出しとなった。

無許可アクセスと認証情報の懸念

Amazonが問題視するのは主に3点だ。まずMetaが展開前にAmazonへ事前通知や合意を求めなかったこと。次に、Museがサイト閲覧時に自らをAIエージェントだと識別していないこと。そして、顧客のログイン認証情報を保存しているように見える挙動があることだ。

Amazonは「代理購入を行うサードパーティアプリは透明性を持って動作し、プラットフォーム側の参加可否の判断を尊重すべきだ」との立場を示し、Metaに自主的にAmazon.comをMuseの対象から外すよう求めたが応じられず、ブロックに踏み切ったという。

これに対しMetaは、Museはパスワードや支払い方法へのアクセス権を持たず、認証情報は安全なストレージで管理していると反論している。Museは発表後1週間で米国App Storeの無料アプリランキング首位に立つなど、急速に普及していた。

クラウドで提携する両社が正面衝突

対立が目を引くのは、AmazonとMetaがビジネスパートナーでもある点だ。Facebook・Instagram上では2023年からAmazon商品を購入できる連携が続いており、さらに4月にはMetaがAmazonのクラウド基盤上でエージェントAIのワークロードを稼働させる数十億ドル規模の契約を結んだばかりだった。提携関係の裏で、Eコマースの主導権を巡る利害が衝突した形だ。

Amazonはこの1年、外部AIエージェントをサイトから排除する動きを強めてきた。Perplexityのブラウザ「Comet」を提訴したほか、GoogleやOpenAIの買い物エージェントについても同様にアクセス制限を進めている。背景には、Amazon自身が独自のAI買い物機能を開発中であり、競合エージェントに購入体験の主導権を渡したくない事情がある。

読者への影響

今回の一件は、AIエージェントが人間に代わって購入や予約を行う「エージェント商取引」の時代における最初の大きな摩擦点として位置づけられる。プラットフォーム側が求める透明性の基準やAI識別の仕組みが定まっていない現状では、同様の締め出しが他のエージェントやサービスにも広がる可能性が高い。ユーザーにとっては、便利な自動購入機能が特定のサイトで突然使えなくなるリスクがあることを意味し、開発者にとってはAIエージェント向けの公式APIや認可の枠組みづくりが急務になっていることを示している。