AT&Tの最高技術責任者(CTO)ジェレミー・レグ氏はWiredの取材に対し、AIによる業務自動化を背景に今後5年間で従業員数が現在の水準を維持しないと述べた。同社は2025年上半期だけで2100人、通年では8000人の人員を削減しており、関係者によれば2030年までに約8万5000人体制を目指しているという(AT&Tはこの数字を不正確としている)。2026年6月時点の従業員数は約13万1000人だった。

削減の背景にある競争環境

AT&Tの判断には同業他社との比較が影響している。公開されている財務情報によると、AT&Tの従業員1人あたりの売上高はベライゾンやTモバイルより低く、両社も直近で人員削減を進めている。レグ氏は「5年後に今と同じ人員数ではいられない」と述べ、業界内の効率競争が人員計画に直結していることを認めた。

AIが担う業務範囲

AT&Tは顧客対応にAIシステムを導入するほか、新設する携帯基地局の立地選定や既存設備の保守点検の発見にもAIを活用している。独自開発した生成AIシステム「GeoModeler」は、悪天候などの非常時にネットワーク設定をリアルタイムで調整する機能を持つ。ソフトウェアコードの生成やサービス障害対応の管理にもAIを利用しており、これまで紙の記録や手作業に頼っていた解約処理などの業務も自動化が進む。

来年からは、投資先でもあるイスラエルのスタートアップDriveNetsが提供するクラウドソフトウェアに、数千カ所の中央拠点の物理ハードウェアを置き換える計画だ。これにより技術者は顧客からの速度向上要望などをリモートで調整できるようになり、中間管理職や若手エンジニアの職務の多くが不要になると見込まれている。

銅線網の全廃とエネルギー削減効果

AT&Tは電力を多く消費する旧来の銅線網の廃止も並行して進めている。年内には既存エリアの85%以上で銅線サービスを提供しなくなる見通しで、2024年以降の銅線廃止によって65万世帯分の電力に相当する66万メガワット時を削減した。同社の総エネルギー消費量は2020年から2025年末までに13.1%減少したという。最高財務責任者(CFO)のパスカル・デロシュ氏は、この施策が「稼働率の低いインフラや、電力と人員を消費するインフラの整理」を可能にすると説明している。

縮小しながらの採用継続

AT&Tは全体の人員を減らす一方で、AIエージェントの開発・統治や自動化プロセスの監督を担う人材、光ファイバー回線を保守する技術者は引き続き採用する方針だ。社内ではオフィス回帰の徹底や職場環境への投資も進めており、AIによる効率化と人材確保の両立を模索する姿勢がうかがえる。米国の通信業界の雇用は25年にわたり減少を続けてきたが、AIがそのペースを加速させる可能性は投資家の関心を集めている。