Beijing Academy AI が Orca を発表——125,000 時間の動画からロボット制御を習得、ラベル不要の世界基礎モデル
北京人工知能研究院(BAAI)が開発した Orca は、アクションラベルを必要としない世界状態予測モデル。5 つのロボティクスタスクで specialized π0.5 システムと同等の成果を達成し、「データ不足の慢性病」を解く可能性を示す。
北京人工知能研究院(BAAI)が 7 月 11 日に発表した Orca は、ロボティクス AI に対する根本的なアプローチの転換を示唆する世界基礎モデルです。従来のトークン予測やフレーム予測ではなく、抽象的な内部表現による世界状態の予測 を行うことで、ロボティクス分野が抱える慢性的なデータ不足の解決策となる可能性を秘めています。
125,000 時間のビデオから独学する Orca
Orca の最大の特徴は、訓練中にアクションラベルを一切見ない という点です。訓練データは以下のみで構成されます:
- 125,000 時間のビデオ映像
- 160 万件のイベント説明(人間による自然言語アノテーション)
- 1,150 万件の Q&A ペア
これらは 4 つの視点(一人称、三人称、ロボット視点、自然シーン)から採取されており、Orca は「次フレームを抽象空間で予測する」という単一の無教師学習タスクを通じて、世界の因果構造を習得します。
ロボティクス応用では π0.5 と同等の成果
実際のロボット制御では、Orca はタスク当たり 200 件の実録画 でのみ訓練されます。この少量のラベル付きデータで、以下の 5 つのタスクで specialized π0.5 システムに匹敵する成果を達成しました:
- 本棚から物体を取り出す(Shelf Reaching)
- ボウルの積み重ね(Bowl Stacking)
- 砂からの物体すくい上げ(Sand Scooping)
- その他の応用タスク
さらに注目すべきは、Orca が 失敗時のエラーリカバリー能力 を示したことです。グリップに失敗した際、即座に再試行するなど、現実的なロボット環境での問題解決能力を実装していません。
テキストおよび画像生成でも高性能
Orca はマルチモーダル基盤モデルとしても機能します。Qwen 3.5 を基盤に、複数の出力モジュール(Action Expert)を接続することで:
- テキスト出力:Orca-4B で平均 51.8% のベンチマーク性能
- 画像予測:PRICE-V0.1 で 59.8%、FLUX.2 Small(56.1%)を上回る
- ロボット制御:前述の通り π0.5 と同等
テキスト生成では Stable Diffusion 3.5 との統合により、自然言語指示から画像を生成できます。
ロボティクス業界への示唆
ロボティクスの根本的な課題は、ラベル付きアクションデータの圧倒的な不足 です。特に実ロボット環境では、各タスク、各環境、各ロボットプラットフォーム向けに専門特化したシステムを構築する必要があり、開発コストと時間が極めて大きくなります。
Orca は「自由なビデオから世界モデルを学び、少量の実データで制御ポリシーを獲得する」というアプローチの可能性を実証しました。これが業界標準となれば:
- 新規ロボットの投入期間を数ヶ月単位で短縮
- 複数ロボット、複数環境への AI 展開の容易性向上
- 小規模企業による robotics AI の参入障壁低下
北京が AI エージェントとロボティクスで急速にキャッチアップしている状況を踏まえると、Orca のアプローチが他国の企業や研究機関にも採用される可能性は高いでしょう。