培養神経細胞から生まれたAI、動画生成を5倍高速化しAWSで販売開始
新興企業The Biological Computing Co.が、培養した神経細胞の活動パターンをもとにしたソフトウェア層で動画生成AIを5倍高速化・コスト80%削減する技術を発表。AWSと提携しSageMaker AIやMarketplaceで提供する。
新興企業The Biological Computing Co.(TBC)が、実験室で培養した神経細胞の活動データをもとに作った小型ソフトウェア層で、動画生成AIの推論速度を5倍に高速化し、コストを80%削減する技術を発表した。同社はAWSと提携し、Amazon SageMaker AIやAWS Marketplaceを通じてこの技術を商用提供していく。
神経細胞の活動パターンをソフトウェアに変換
TBCの手法は、4096個の電極を備えたチップ上で培養した神経細胞に電気刺激を与え、信号がどのように広がり消えていくかを測定するところから始まる。この生物学的な測定データをもとに、パラメータ数15万6000以下という極めて小さな「ニューラルダイナミクスアダプター」というソフトウェアモジュールを構築し、既存のオープンソース動画生成モデルに統合する。実運用の段階では生物学的な処理は一切不要で、標準的なGPU上でそのまま動作する。
公式発表によれば、このアダプターが追加するオーバーヘッドはベースモデルに対して0.1%未満に抑えられており、モデルの出力品質も向上したという。CEOのAlex Ksendzovsky氏は「本物のニューロンから得た発見を、企業やクリエイター向けのより速く安価なAIに変えている」とコメントしている。
AWSとの提携内容
TBCはAWSのカスタムAIチップ「Trainium」上でモデルを稼働させ、Amazon SageMaker AI経由で配信、AWS Marketplaceで販売する計画だ。THE DECODERの報道では、この統合は現時点で「進行中」であり、現在は同社サイトからの早期アクセス登録のみが可能な段階にとどまる。商用モデルのベースとなる基盤モデル名や具体的なハードウェア仕様は非公開で、他の最適化手法との比較検証もまだ示されていない。
実証実験の成果と残る課題
TBCはMinecraftのワールドモデル「Oasis」を使った実験で19%の性能向上を報告しているが、これは商用モデルとは別の検証結果だ。生体由来のデータから得た知見を、標準的なシリコン上のAIに移植するというアプローチ自体は目新しく、動画生成AIのコスト構造を変える可能性を持つ一方、実際の商用モデルでどこまで再現性のある効果が出るかは、AWSでの提供開始後の検証を待つ必要がある。