中国の開発者コミュニティで、「トランスファーステーション」と呼ばれるAPIプロキシを経由し、Claudeのトークンを正規価格の約1割で購入できる仕組みが広がっている。Anthropicが敷いている地域制限やセルフィー認証などの厳格なアクセス管理は、この仕組みによって組織的に回避されている状態だ。

地域制限を回避する仕組み

Anthropicは中国からのアクセスに対し、ジオブロッキングやKYC(本人確認)としてのセルフィー認証を導入している。トランスファーステーションは海外サーバーに設置されたプロキシで、中国の開発者はこれを経由することで正規のアクセス制限をすり抜けてClaudeを利用できる。

価格を引き下げる手口は複数確認されている。Anthropicが新規登録者に付与する5ドル分の無料クレジットを大量のアカウントで登録して使い回す手法、上位モデルのOpus 4.7へのリクエストを安価なSonnetや中国製モデルに裏側でリルートする「モデルスワッピング」、そして1つの月額200ドルのMaxプランを複数ユーザーで分割して使う手法だ。これらを組み合わせることで、正規価格から70〜90%の値引きが実現しているという。

過去の大規模乱用との関連

同様の仕組みを使った大規模な乱用は過去にも確認されている。ある蒸留攻撃では、2万4000個を超える偽アカウントを使い、1600万件を超えるリクエストが生成された事例が報告されている。KYC認証の回避に使われる偽の虹彩スキャンデータも、30ドル未満で取引されているという。

読者への影響

この問題は単なる価格の話にとどまらない。トランスファーステーションを経由したやり取りでは、プロンプトとレスポンスのログが収集・転売される懸念があり、機密情報や個人情報を含むやり取りが第三者に渡るリスクがある。Anthropicが安全性やセキュリティを重視して構築してきたアクセス管理の実効性が、こうしたグレー市場によって空洞化しつつある点は、生成AIサービス全体のガバナンスにとっても無視できない課題だ。