Googleは、新しいフロンティアモデル「Gemini 4 Argon」を発表した。ソフトウェアエンジニアリング、企業内の知識労働、サイバーセキュリティ防御の3分野で業界最高水準の性能を主張する一方、一般提供の時期は明言していない。

6月に予告した「Gemini 3.5 Pro」の後継として登場

Googleは2026年6月の時点で次期フラッグシップモデル「Gemini 3.5 Pro」を予告していたが、その後の数か月は小型の「Flash」系モデルの投入が続いていた。Argonはこの間隙を埋める形で、フロンティア領域に本格復帰するモデルとして位置づけられている。

出力トークンの上限は、これまでのGeminiモデルの6万4000から100万へと大幅に拡大した。Googleは、この拡張によって1回のリクエストでより複雑なタスクを完結できるようになると説明している。

ベンチマークで競合モデルを上回る主張

Googleが公表したベンチマーク結果によると、実世界のコーディングタスクを測る「DeepSWE v1.1」でArgonは77.9%を記録し、GPT-6 Astra、Fable 5.1、Opus 5.5を上回ったとしている。金融・法務・税務分野の企業向けタスクを測る「Vals Index」でも首位を獲得したという。

サイバーセキュリティ分野では、脆弱性修正タスクを測る「CWE-bench v1」で68%を記録し首位タイとなった。長編動画理解のベンチマーク「LVBench」では91.7%を記録している。これらの数字はGoogle自身が公表したものであり、第三者による再現検証はまだ行われていない。

まずはサイバー防御の限定パートナーに提供

Argonは現時点で、「信頼されたサイバー防御担当者」向けの限定プログラム「Fairwind Program」を通じてのみ利用できる。セキュリティ企業Wizは早期にArgonへアクセスし、複数の医療機関で使われるシステムに存在する重大な脆弱性を発見したとGoogleは説明する。従来のフロンティアモデルはこの欠陥を見逃していたとしているが、具体的な検証データは示されていない。

Googleはモデルの規模が大きいため段階的な公開が必要だとし、API価格については現時点で発表していない。一般提供はまず有料APIユーザーとGoogle AI Ultra購読者から開始する方針で、その前提として米政府による任意の事前レビュープロセスや早期テスターからのフィードバック、安全対策の追加調整を経る必要があるとしている。

社内での活用実績と安全対策

Google社内では既に多数の従業員がArgonを利用しているという。データセンター全体のテレメトリデータを分析し、メモリを300TiB節約したほか、最終的には500TiB〜1PiBの節約を見込む。また、OS「Fuchsia」のZirconカーネルを含む80万行超のC/C++コードをRustへ移行する作業にも投入されている。

今夏に発生した複数の高度なハッキング事件を受け、モデルの逸脱行動への懸念が業界で高まっている。Googleはこれに対応する形で、Argonの思考過程(チェーン・オブ・ソート)を監視し、モデルが想定外の挙動を示した場合に実行を停止できる仕組みを導入したと説明する。プロンプトインジェクション攻撃への耐性を測るGray Swanのベンチマークでも高いスコアを記録したとしている。

コーディング支援や企業向けエージェントの性能競争が激化する中、Argonの本格展開がどこまで既存モデルの優位性を崩すかは、一般提供が始まるまで見極めが難しい状況が続く。