OpenAI、ウクライナ政府にサイバー防御AI「Daybreak」を無償提供
OpenAIがウクライナ政府にサイバー防御プログラム「Daybreak」への無償アクセスを提供すると発表。年間6000件超のサイバー攻撃に対応する現地チームの脆弱性調査・修正作業を高速化する。
OpenAIは2026年9月23日、サイバー防御プログラム「Daybreak」へのアクセスをウクライナ政府に無償提供すると発表した。ウクライナのデジタル変革省と連携し、電力網や水道システムなど民間インフラを守るサイバー防御チームに、脆弱性調査や修正作業を高速化するAIツールを提供する。OpenAIはこの取り組みを支えるため、10億ドルを超える補助トークンを拠出するとしている。
年間6000件のサイバー攻撃に対応
ウクライナの国家サイバーインシデント対応チーム「CERT-UA」は、2025年だけで約6000件のサイバーインシデントに対応した。単純計算で1日あたり15件を超えるペースだ。攻撃は病院システムやエネルギー部門、通信インフラにまで及んでおり、市民生活を支える基盤への圧力は増す一方だという。ロシアのGRU系ハッカーが2015年にウクライナの電力網を停止させた前例もあり、インフラ攻撃への警戒は特に高い。
Daybreakは、古いソフトウェアの精査や不審な活動の調査、脆弱性の検証、修正パッチのテストなど、サイバー防御担当者の認可された作業を支援するAIツール群だ。ウクライナに提供されるアクセスには、AIモデル「GPT-5.6 Sol」が含まれる。想定される用途は、インシデント対応、脅威の分類、ログイン分析、システムインベントリの整理、コード解析、脆弱性検証など幅広い。
欧州での先行実績を土台に拡大
OpenAIはすでにフランス、ドイツ、ポーランドなど欧州各国のサイバー防御担当者にDaybreakへのアクセスを提供している。EUのサイバーセキュリティ機関ENISAはこのモデルを使い、EU加盟機関で使われるソフトウェアの脆弱性を特定し、すべて修正済みにしたという実績がある。ウクライナへの提供は、この欧州展開の延長線上に位置づけられる。
OpenAIは、Daybreakの狙いを人間の専門家の代替ではなく、防御側の対応速度を引き上げることにあると説明している。攻撃側が自動化ツールを駆使する中、防御側の調査・修正サイクルを人手だけに頼っていては後手に回りかねないという問題意識が背景にある。
民間インフラ防衛への波及
今回の提供は、AI企業が地政学的な紛争地域のサイバー防衛に直接関与する事例としても注目される。ウクライナ側の関係者は、守るべき対象は「コンピュータそのものではなく、国家機能の維持」だと説明しており、Daybreakの活用は電力・水道といった生活インフラの継続稼働に直結する取り組みと位置づけられている。AI企業による防御支援が今後、同様の脅威に直面する他国・他地域にも広がるかが焦点になる。