かつて「全職種が消滅する」と警告していた AI 業界のリーダーたちが、ここにきて発言を転換している。一方、現場のソフトウェアエンジニアは CEO の楽観論に頼らず、自らのスキルで道を切り開いている。

CEO の大転換:Altman と Amodei の路線変更

OpenAI の CEO Sam Altman は X(旧 Twitter)で「AI はこれまでのところ雇用を創出している。これは予想していなかった」と述べた。Anthropic の CEO Dario Amodei も同様に、自動化を「生産性乗数」と再評価し、以前の悲観的な見通しを修正している。

この転換は注目に値する。両者はかつて、AI が職業全体を消滅させるリスクについて警告していた。しかし、実際のデータが出始めると、言説が反転したのだ。影響力のある CEO の発言は市場や政策に影響を与える。その発言が 180 度変わるということは、「最初の予測が過度だった」という暗黙の認識でもある。

しかし、実データは両説とも支持しない

ここが重要な落とし穴だ。大学研究とイェール予算ラボの調査では「AI が全体的な生産性や労働市場に大きな影響を与えたエビデンスはない」という結論が出ている。つまり、Altman の「雇用創出」仮説も、かつての「大量失業」仮説も、どちらも実証されていない状況が続いている。

さらに複雑なのは、プログラマーとライターの職種に限ると「職の縮小が始まった」というデータもある。ただし、これも ChatGPT 発表(2022年11月)の数か月前に始まった傾向であり、AI そのものが直接の原因とは言い切れない。

エンジニア現場の対応戦略

一方、ソフトウェアエンジニアの現場では、CEO の発言を待たずに対応が始まっている。The Guardian の報道によれば、エンジニアたちは「スキルの刷新」と「原理の再学習」に取り組んでいる。

具体的には、ルーティンコーディングタスクをAIに任せつつ、アルゴリズム設計、システムアーキテクチャ、セキュリティ脅威モデリングなど「判断を必要とする領域」に時間を割き当てることで、自らの市場価値を高める動きだ。また、AI との協働方法そのものをスキルとして習得し、「AI を使いこなせるエンジニア」へのキャリア転換を図る者も増えている。

「待つ」のではなく「適応する」

この図式が示すのは、雇用の未来は CEO の予想では決まらず、実務のエンジニアが「何をするか」で決まるということだ。Altman の新しい楽観論も、過去の警告も、参考値に過ぎない。職人技が要求される仕事は生き残り、流動的で定型的な仕事は淘汰される。それは歴史が何度も示してきたパターンだ。

雇用市場は予測の場ではなく、適応の速さを競う場になっている。