Stability AI、Sean Parker主導で音楽AI企業へ転換、主要レーベルと提携
画像生成で知られるStability AIが、Napster共同創業者Sean Parkerの主導で音楽AI企業へ軸足を移している。主要3レーベルとEAから76億円規模の資金を調達し、ライセンス楽曲での開発体制を整えた。
画像生成AIの草分けとして知られるStability AIが、音楽業界向けAIツール企業への転換を進めている。Napster共同創業者のSean Parkerと、CEOのPrem Akkarajuが主導し、Universal Music Group、Sony Music、Warner Music、Electronic Arts(EA)から76億円規模のシリーズB資金を調達、累計調達額は232億円に達した。
訴訟相手から事業パートナーへ
この転換の背景には、音楽業界とAI企業の関係性の変化がある。2年前、大手レコード会社はSunoやUdioといったAI音楽生成企業を著作権侵害で提訴していた。Stability AIは2025年後半にレーベル側と和解し、ライセンス契約を締結する方向へ方針転換した。現在ではUniversal、Warnerがそれぞれ提携を結び、ライセンス供与に加えて共同開発の権利まで獲得している。
Parkerは2024年の救済投資80億円でStability AIの経営に加わった人物だ。当時同社は取引先への未払い債務が100億円に達するなど経営危機にあり、Akkarajuを新CEOに起用して立て直しを図った。今回の資金調達は、その立て直しが音楽分野での事業モデル確立という形で結実したことを示す。
オーディオモデルとDAW連携ソフトの拡充
Stability AIはこれまでに3種類のオーディオモデルと音楽編集ソフトウェアをリリースしている。テキストプロンプトから楽器トラックやスニペットを生成できるほか、今後のアップデートではハミング入力によるメロディー操作や、ビートボックスでのドラムパターン制御も計画されている。
資金調達の1週間前には、Ableton LiveやLogic Proなど業界標準のDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)に組み込める「Stable Audio 3.0」のプラグインも投入した。ウェブ上の単発ツールから、プロの制作環境に組み込まれるインフラへの位置づけの変化がうかがえる。資金の使途はクリエイティブ制作スイートの拡充、応用研究、スタジオ・レーベル向けプロフェッショナルサービスの強化に向けられる。
音楽AI業界への影響
Akkarajuは「生成AIがあらゆるプロデューサー、ミュージシャン、ストーリーテラーを力づける」というビジョンへの支持がこの資金調達だと述べている。主要レーベルが自ら出資し共同開発に関わることで、無断学習を巡る訴訟リスクを抱えたまま事業を続ける競合に対し、Stability AIはライセンス済みデータという差別化要素を得たことになる。
音楽AI業界では、違法学習データを使った生成サービスへの規制圧力が強まる一方で、レーベルと正式に提携したツールは商用利用の安心感を武器にできる。Stability AIの事例は、AI企業が権利者との対立から協業への転換によって生き残りを図る一つのモデルケースとなりつつある。