Amazonが、データセンター建設に対する住民の反発を和らげるため、今後5年間で10億ドル(約1500億円)超を地域コミュニティに投資する計画を発表した。AWS(Amazon Web Services)のCEO、Matt Garmanが3000語を超える長文ブログで公表したもので、教育や職業訓練、水・エネルギー保全といった地域の優先課題に資金を充てる。

全米100超の地域で建設制限の動き

背景にあるのは、データセンター建設への反対運動の広がりだ。記事によれば、全米100以上の地域で新規データセンター建設を制限するモラトリアム(一時停止)が検討されており、新規データセンター建設の制限を支持するアメリカ人は約60%に達するという調査結果もある。データセンターは電力消費量がサッカー競技場や工場を上回り、小都市1つ分に相当する規模になることもあり、電気代や水資源への懸念が住民の反発を招いている。

Amazonのデータセンターへの投資は加速しており、2026年の資本支出は220億ドル(前年の200億ドルから増加)に達する見通しだ。AIのデータセンター需要は、2030年までに世界の電力使用量の約3%(935兆ワット時)を占めると予測されている。

投資の内容と水使用量の目標

今回発表された「Built Together」という枠組みでは、既存の地域投資に上乗せする形で10億ドル超を投じる。教育プログラムや職業訓練、エネルギー費負担の軽減、水・エネルギー保全プロジェクトなどが対象となる。Amazonはあわせて、2030年までにデータセンターの水使用について「ウォーターポジティブ」(使用量以上の水を地域に還ってくる状態)を目指す目標も掲げ、現時点でその目標の75%まで到達していると説明している。

批判は収まらず

ただしAars Technicaの報道が示す通り、この取り組みに対する評価は分かれている。Garmanのブログは、データセンターに関する「4つの誤解」への反論という形式を取り、データセンター建設を阻止することは「米国経済と国家安全保障に取り返しのつかない打撃を与える」と訴える内容も含んでいた。地域への投資表明と並行して開発推進の正当化を強く打ち出したことで、環境負荷の開示が不十分だと懸念する声はむしろ強まっている。

企業による地域コミュニティへの投資表明と、データセンターが実際に消費する電力・水資源の規模との間にあるギャップをどう埋めるかは、AI基盤整備を進めるテック企業全体に共通する課題として今後も問われ続けることになる。

アップデート:政府交渉でのNDA使用を中止、具体的な使用量データも開示

Garman氏はその後、政府機関とのデータセンター交渉において秘密保持契約(NDA)の使用を取りやめると発表した。環境活動家のアリン・ブロックビッチ氏が、データセンター問題への「最大の不満は透明性の欠如」であり、「プロジェクトが許可された後に初めて詳細が公表される」慣行が批判の的になっていると指摘していたことを受けた対応だ。ニューヨーク州は大規模データセンターの許可に1年間のモラトリアムを導入しており、米国全体では100件以上のモラトリアムが検討されている状況が背景にある。

Garman氏はあわせて具体的な使用量データも開示した。データセンターの直接的な水使用量は米国の産業用水使用量の0.5%にとどまり、ゴルフ場やアーモンド栽培よりも少ないと主張。非常用発電機についても「年間の稼働時間は約10時間程度」と説明している。NDA廃止という手続き面での透明性向上と、具体的な数値開示という2つの対応を同時に打ち出した形だが、専門家からは「根本的な信頼危機」が指摘されており、数字の開示だけで地域住民の懸念が解消されるかは不透明だ。