労働者団体Worker Info Exchange International(WIE)は9月2日、アムステルダム地方裁判所にUberを相手取った集団訴訟を提起した。対象はイギリス、フランス、ドイツ、オランダ、ベルギー、ポーランド、ルーマニアの7カ国にまたがる約24万人のドライバーで、Uberが運賃を自動算定する「アップフロント・プライシング」がEUの一般データ保護規則(GDPR)に違反していると主張している。

何が問題視されているのか

訴状によると、UberのAIによる自動意思決定・プロファイリングは、ドライバー本人の同意なしに行われている。ドライバーの証言では、同じ配車依頼が複数の運転手に異なる金額で提示されたり、長距離走行の帰路便では「運転手が空車で戻りたがらないはず」とAIが判断し、あえて低い運賃を提示するケースが確認されたという。

こうした運賃決定の背景ロジックがドライバー側に一切開示されないまま、走行データや受注履歴がAIの学習にも転用されていると訴状は指摘する。WIEはこの点についても、データの不正利用にあたるとして併せて争う構えだ。

損失額と請求内容

WIEの分析では、この運賃体系が導入された2021年8月から2026年6月までの間に、イギリスのドライバー1人あたりの累計損失額は最大2万6239ポンド(約530万円)、年平均では5337ポンド(約108万円)に達するとされる。訴訟では損害賠償に加え、GDPR違反とされる運用の即時停止を求める差止命令も請求している。

Uber側は、個々のドライバーの行動履歴に基づいて運賃を調整する事実はないとし、需給に応じたダイナミックプライシングは不人気な配車の報酬を引き上げるためのものだと反論している。

ギグエコノミーとAI規制への影響

今回の訴訟は、EUがAI法やGDPRを通じてアルゴリズムによる労働管理をどこまで規制できるかを試す試金石になる。24万人規模という原告数と、億単位に上りうる賠償請求額は、欧州の配車・宅配プラットフォーム全体にとって無視できない先例となる可能性がある。

日本を含む各国のギグワーカー保護の議論でも、AIによる価格・配車決定の透明性は今後避けて通れない論点だ。プラットフォーム企業がアルゴリズムの判断根拠をどこまで開示すべきか、今回の訴訟の行方が一つの指標になるだろう。