Anthropic が実施した大規模世論調査で、米国民の AI への不安が鮮明になりました。約 52,000 人を対象とした調査からは、失業と認知依存という 2 つの深刻な懸念が浮かび上がります。

調査の概要——52,000 人の米国民の声

Anthropic は 2025 年 11 月から 12 月にかけて、YouGov と提携して米国民 51,993 人(16 歳以上)を対象に調査を実施しました。対象は全 50 州、コロンビア特別区、プエルトリコに分散しており、極めて代表的なサンプルです。

特筆すべきは、この調査が「Anthropic Claude の利用者」に限定されず、一般的な米国民の AI に対する認識を測定した初の大規模調査だという点です。

主要な懸念——失業が第 1 位、認知依存が第 2 位

調査結果は以下の通りです:

懸念事項割合
失業への懸念64%
思考能力の喪失・認知依存56%
AI 企業への不信85% が責任あるデプロイを信頼していない
情報操作への懸念52%

失業懸念はすべての州で最大の懸念事項です。また、AI 企業に対する信頼の低さも注目に値します。米国民の 85% が AI 企業を「責任あるデプロイメントができない」と見なしています。

職業による懸念の差異

興味深いのは、職業によって懸念のパターンが異なることです。

創造的専門家(デザイナー、ライター)と教育者では、認知依存への懸念が 61% に達します。一方、建設労働者では 39% に留まります。

身体的労働は AI による直接の自動化を受けやすいにもかかわらず、創造的・知的労働に従事する者が「思考能力の喪失」をより懸念しているのは、AI が創造性や思考そのものを奪う可能性への恐怖を反映しています。

日常利用者の方が懸念が低い——経験が恐怖を軽減

最も興味深い発見は、実際に AI を日常的に使う労働者と使わない労働者で大きな差があるということです。

  • AI 日常利用者:失業懸念 54%
  • AI 非利用者:失業懸念 70%

16 ポイントの差は決して小さくありません。これは、実際に AI を使い、その能力と限界を知ることで、漠然とした恐怖が軽減されることを示唆しています。

矛盾する行動——反対しながらも効率を求める

調査からは矛盾も浮き彫りになります。多くの米国民は「職場での AI 導入に反対」と答えながら、同時に「AI が実行できると思うタスクについては AI を使いたい」と答えています。

つまり、抽象的には AI を恐れるが、具体的な利益には惹かれるという心理が働いています。

教育レベルと懸念の関係

教育レベルが高いほど失業懸念が強まる傾向も見られます。これは、高学歴層が AI の機械学習能力をより深く理解しており、自分たちの職種が替代される可能性をより現実的に評価しているためと考えられます。

読者への意味——懸念は妥当だが、使い方が重要

この調査が示すのは、AI に対する米国民の不安は根拠のない恐怖ではなく、実質的なリスク認識に基づいているということです。

同時に、日常利用者の懸念が低いというデータからは、「AI とどう付き合うか」という 実践的な経験と教育が、恐怖の軽減に効果的だということが示唆されます。

企業や組織が AI を導入する際は、単に技術を導入するだけでなく、従業員に対する教育と段階的な導入を通じて、「AI は敵ではなく、使い手の側にある存在」という認識を作ることが重要です。

Anthropic のこの調査は、AI 企業が社会的信頼を回復するために何をすべきかを問いかけています。