Grok 4.5 一般公開、Cursor データで訓練も『自己申告ベンチマーク』に懐疑の声
SpaceXAI(旧xAI)が Grok 4.5 を一般公開しました。Cursor の実開発セッションを学習に取り込み、Harvey 法律ベンチマークで1位を獲得。価格は入力$2/出力$6(100万トークンあたり)と Opus 4.8 の半分以下ですが、独立系ベンチマークでの検証はまだなく、Cursor ユーザーのコードが無断で学習に使われた可能性も指摘されています。
Elon Musk 率いる SpaceXAI(今月 xAI から改称したばかりのブランド)が、新モデル Grok 4.5 を一般公開した。コーディング・エージェント業務・ナレッジワークに照準を絞った本作は、AI コーディングツール Cursor の実開発データを学習に取り込んだ点が最大の特徴だ。価格は Opus 4.8 の半分以下と競争力を見せる一方、性能を裏付ける独立系ベンチマークはまだ存在せず、Cursor ユーザーのコード履歴が無断で学習利用された可能性も浮上している。
Cursor の実開発セッションを学習データに
Grok 4.5 は xAI の 1.5 兆パラメータ基盤モデル「V9」をベースに、Cursor のコーディングデータを補助学習(supplemental training)として追加したモデルだ。単なるコードスニペットではなく、実際の開発者がバグを直し、リファクタリングし、AI の提案を採用・却下する一連のセッション履歴そのものが学習材料になっている。
この背景には、SpaceX と Cursor の運営元 Anysphere との資本関係がある。SpaceX は2月に xAI を吸収合併し、6月には Anysphere を60億ドルの全株式取引で買収すると発表(クロージングは2026年第3四半期予定)。Grok と Cursor は事実上、同じ企業グループの製品になりつつある。
ベンチマークと価格
公式発表では、Grok 4.5 は Harvey の Legal Agent Benchmark で1位を獲得したとされる。またコーディングタスクの解決に平均 15,954 出力トークンを要し、これは Opus 4.8(max)の 67,020 トークンと比べて約4.2倍のトークン効率だという。推論速度は高速モデル水準の 80 TPS。
価格は基本モデルが入力 100万トークンあたり $2、出力 $6。高速版(Fast)は入力 $4、出力 $18に設定されている。比較として、Anthropic の Claude Opus 4.8 は入力 $5、出力 $25であり、Grok 4.5 は半分以下の価格で提供されている計算になる。
独立検証はまだない
一方で、性能面の評価には慎重な見方も出ている。Musk 自身は非公開ベータの結果として「Opus に匹敵、あるいは上回る」と投稿していたが、これは SpaceX・Tesla のエンジニアによる社内評価であり、現在は xAI と同じ企業グループに属する人員による自己申告にすぎない。LMArena・Artificial Analysis・SWE-bench・Humanity’s Last Exam といった第三者ベンチマークでのスコアは、本稿執筆時点でまだ公開されていない。
さらに、Cursor 側が独自に運用する CursorBench では、旧バージョンの Cursor コードベースのスナップショットが誤って学習データに混入していたことが判明している。Cursor はこの点を認めた上で「影響の正確な規模は不明」としつつ、該当データは今後のモデルからは除外する方針を示した。ベンチマーク汚染問題は Grok 4.5 に限らず、SWE-bench Verified 全体で OpenAI 自身も認めている業界共通の課題でもある。
開発者のコードが学習に使われた可能性
Cursor は4百万人のアクティブユーザーを抱える人気コーディングツールであり、今回の件は開発者コミュニティにプライバシー面の懸念を呼んでいる。Cursor のプライバシーポリシーでは、Privacy Mode を有効にしている場合や、ユーザーが明示的に同意していない場合は入力内容をモデル学習に利用しないとされている。ただし SpaceX による買収完了後のプライバシーポリシーが GDPR の要件をどう満たすかは、現時点で明確になっていない。自分のデバッグセッションやリファクタリング履歴が、買収先企業のモデル学習に使われていた可能性を懸念する開発者も少なくない。
提供チャネルと今後
Grok 4.5 は Cursor のデスクトップ・Web・iOS・CLI・SDK全てで利用可能なほか、Grok Build(xAI のエージェント開発環境)、xAI API コンソールからも利用できる。Cursor の Individual・Team プランでは初週の利用枠を通常の2倍に設定するキャンペーンも実施されている。なお EU 向けの提供は2026年7月中旬以降を予定しており、現時点では EU 圏でのアクセスはできない。
価格とトークン効率の面では魅力的な選択肢に映る Grok 4.5 だが、独立系ベンチマークでの実力検証、そしてユーザーデータの扱いを巡る透明性の確保が、今後の評価を左右する焦点になりそうだ。