Google DeepMind出身者が創業したロンドン拠点のスタートアップ、Inherent Labsが、パラメータ数わずか27億の「AI Scientist」エージェント「Faraday」を発表した。科学論文の再現というタスクにおいて、Anthropicの大規模モデルClaude Opus 4.8やOpenAIのGPT-5.5を上回る成果を出したという。

小規模モデルが大規模モデルを上回る仕組み

FaradayはQwen 3.6という27Bパラメータの小規模モデルをベースにしている。Claude Opus 4.8やGPT-5.5といったフロンティア級の大規模モデルに比べれば桁違いに小さいにもかかわらず、100本の研究論文から抽出した310のタスクからなる独自データセット「Replica」を用いた強化学習(RL)で訓練することで、これらを上回る性能を実現した。

評価基準として、図表の再現精度だけでなく「研究的直感」と呼べる科学的な妥当性判断もLLMジャッジやルーブリックの自動生成によって組み込んでいる点が特徴だ。開発チームはGPT-5.5 Codexを補助ツールとして活用しつつ、長期にわたるRL訓練の不安定性に対応する手法を採用したと説明している。

会社の背景と今後の展開

Inherent Labsは、DeepMind出身のEdward Hughes氏を含む4人が創業し、5000万ドルのシード資金を調達している。現在の従業員数は約12人で、年末までに20〜25人へ拡大する計画だ。拠点はロンドンのKing’s Cross地区に置いている。

Hughes氏は「建てるべきものを選別する」戦略を強調し、既存のコーディングツールを積極的に活用する方針を示している。また、英国の人材流動性に関わる「ガーデンリーブ」制度の改革を求める声も上げており、AI人材獲得競争の激しさをうかがわせる。

読者への影響

Faradayは一般公開されたプロダクトではなく、現時点では研究成果としての発表にとどまる。しかし、小規模モデルに特化した訓練手法によってフロンティアモデルに匹敵、あるいは上回る性能を引き出せることを示した点は重要だ。モデルサイズだけでなく、タスクに特化したRL訓練の設計が今後の競争軸になる可能性を示唆している。