ペンシルベニア大学ウォートン・スクールの研究チームが、AI買い物エージェントの推奨が外部情報や提示順序でどれだけ揺れ動くかを検証した。Claude Opus 4.8・Claude Haiku 4.5・Gemini 3.5 Flash・Gemini 3.1 Flash Lite・GPT-5.5・GPT-5 Miniの6モデルを、独自開発した模擬ECサイト「ACES(Agentic e-Commerce Simulator)」上でテストした結果、たった1件のレビュー記事を与えるだけで推奨商品の選択率が90ポイント以上変わるケースが見つかった。

レビュー記事1本で選択率が急変

ACESは、AIエージェントに商品ページのスクリーンショットを見せ、画像を分析させたうえで商品を選ばせる仕組みだ。研究チームがWirecutterのレビュー記事を参照情報として与えたところ、フィットネストラッカー「Fitbit Inspire 3」の選択率がClaude Opus 4.8で90ポイント、Gemini 3.5 Flashでは99ポイント跳ね上がった。特定の情報源1件を見せるだけで、AIの推奨がほぼその情報源の言う通りになってしまう格好だ。

複数の情報源を同時に与えても、推奨が平均化されてバランスの取れた判断になるわけではなかった。むしろ変動性はさらに増し、Wirecutterの情報が含まれると「ほぼ支配的な影響力を持つ」状態になったという。同じ情報源でも提示する順序を変えるだけで結果が変わり、Gemini 3.1 Flash Liteは2〜56ポイントの範囲で選択率が動いた一方、Claude Haiku 4.5は41〜42ポイントとモデルによって安定性に差があった。

ユーザーの好み情報でも判断が揺れる

「ハイキングが好き」といったユーザーのメモリ(過去の行動や好みの記録)を与えた場合も、推奨は明確な最適解から外れることがあった。スマートウォッチの比較では、ユーザーメモリを与えるとGarmin Vivoactive 5の選択率がClaude Opus 4.8で75ポイント上昇した一方、Gemini 3.5 Flashは86〜92%の高い確率で最適な製品を選び続けており、モデルによって外部情報への耐性に開きがあることが示された。

買い物を任せる前に知っておくべきこと

研究チームはACESのフレームワークを公開しており、他の研究者が実験を再現・拡張できるようにしている。今回の結果は、AIエージェントに商品選びを任せる際、同じユーザーであっても時期や参照する情報源によって異なる推奨を受ける可能性があることを示している。ECサイトやレビューサイトがAI向けの情報発信を最適化する動きが今後強まれば、こうした変動はさらに大きくなりかねない。買い物代行としてAIエージェントを使う場合は、単一の推奨をそのまま信頼せず、複数回試したり判断根拠を確認したりする姿勢が必要になる。