Harvard大学の物理学者Matthew Schwartz氏が、オープンソースのハーネス「BootLoops」とClaudeを組み合わせ、わずか3ヶ月で18の科学分野にわたる36本の論文を作成した。素粒子物理学から生態学、人口遺伝学、言語学まで幅広い領域で成果を出した一方、Schwartz氏は「すべてを自分の目で確認する必要がある」と、人間による検証の重要性を強調している。

BootLoopsが狙う「Claudeが得意な問題」

BootLoopsは、AIに汎用的な研究全般を任せるのではなく、AIが力を発揮しやすい狭い計算タスクに絞り込むアプローチを取る。コードを書き、実行し、結果を確認し、改善するというサイクルを繰り返す仕組みで、19人の共同研究者とともに運用された。

対象を絞ったことで、Schwartz氏のチームは3ヶ月という短期間で複数分野の論文を量産できた。たとえば素粒子物理学では30件の積分を計算し、そのうち15件はこれまで未解決だったものだという。

20年来の生態学方程式も解決

成果は物理学にとどまらない。中立生物多様性理論における20年来の未解決方程式を解いたほか、1000 Genomes Projectから57億組の変異ペアを解析した。経済学分野では4452件のデータパッケージを自動処理している。

とくに注目されるのは、樹種構成データの分析から、環境変化が理論的な予測より4.5倍速いペースで進んでいることが示された点だ。これは既存の学術的想定を覆す知見であり、BootLoopsが単なる計算補助ではなく、新しい発見につながる可能性を示している。

「勝利を早まって宣言する」という課題

Schwartz氏は成果を評価する一方で、Claudeの弱点も指摘する。「Claudeは勝利を宣言するのが早すぎることがある」と述べ、AIが出した結論をそのまま信頼せず、人間が全件を見直す体制が欠かせないと強調した。

BootLoopsは研究者に代わって答えを出す道具ではなく、分野をまたいだ未解明の関連性を見つけ出す道具だという位置づけだ。最終的な研究の方向性を定め、結論を検証するのは依然として人間の役割であり、AIの活用が進んでも専門家による監督は手放せない。

エンジニアリング教育への示唆

Schwartz氏は、AIの計算能力が向上する中で、工学や機械学習の伝統的な教育カリキュラムも見直しが必要になる可能性があると述べている。オープンソースで公開されているBootLoopsは、研究者や開発者が今日から試せる実例であり、Claudeのような大規模言語モデルを専門分野の計算に応用する際の具体的な設計パターンを示した点で、実務的な価値が大きい。