AI眼鏡の未来は、レンズの裏側で決まるかもしれません。韓国の小さなスタートアップが、業界の方向性を大きく左右する光学部品技術を持っています。

LetinAR とは——設立背景

LetinAR は 2016 年に設立された南朝鮮のスタートアップです。CEO の Jaehyeok Kim と CTO の Jeonghun Ha は高校時代からの友人で、共同創業者として同社を率いています。LG Electronics がバックアップしているというのも強みです。

企業サイズは小さいですが、日本では NTT QONOQ Devices や Dynabook といった大手がすでに顧客です。スイスの AR ヘルメット企業 Aegis Rider も LetinAR の光学モジュールを搭載しています。つまり、AI眼鏡市場が「裏方の要素技術」をどれだけ必要とするか、すでに示されているわけです。

PinTILT 技術——既存技術との決定的な違い

LetinAR が開発した「PinTILT」は、光学設計の根本が異なります。

既存技術の課題

Waveguide方式(従来型)

  • テレビのように光を全体に広げる方式
  • 効率が悪く、ディスプレイのような均一な視野が作りにくい

Birdbath方式(改良版)

  • 光を眼に直接届ける方式で効率的
  • ただし厚さがあり、眼鏡としては装着感が悪い

PinTILT の優位性

微小な光学要素を精密に配置することで、光を効率的に眼に誘導します。結果:

  • 薄さ: 眼鏡として装着可能なサイズを実現
  • 軽さ: デバイスの負担を減らし、長時間装着に対応
  • 省電力: バッテリー持ちが改善され、デバイス全体の設計自由度が増す

つまり、ユーザーが「実際に使える眼鏡」に最も近い設計です。

資金調達と IPO への道

LetinAR は最近、韓国開発銀行とロッテベンチャーズから 1,850 万ドルの新規調達を発表しました。総資金調達額は 4,170 万ドルに達しています。

さらに注目すべきは、2027 年の IPO 計画です。これはスタートアップの成長ステージが「実績の証明」から「市場の評価」へと移ろうとしている兆候です。

AI 眼鏡産業への影響

Google、Meta、Apple などの大手がそれぞれ AI 眼鏡プロジェクトを進めている中、光学部品の質は製品の成否を左右します。LetinAR の技術が「業界標準」に採用される可能性は高まっています。

同社の技術は日本やスイスの企業がすでに実装段階にあるため、市場への浸透は加速するでしょう。

まとめ:見えない部分が見える時代へ

AI眼鏡の競争は、大手の資金力と LetinAR のような小さなスペシャリストの技術力が絡み合っています。光学部品という地味だが重要な領域で、韓国のスタートアップが業界をリードしている現実は、テックトレンドの多極化を象徴しています。

2027 年の IPO とその後の市場反応は、AI眼鏡市場全体の成熟度を測る指標になるかもしれません。