OpenAIは、プリンストン高等研究所(IAS)を拠点とする「数学とAIに関する諮問委員会」の新設を発表した。フィールズ賞受賞者を含む9人の数学者が初期メンバーとして参加するが、委員会はあくまで助言役であり、OpenAIの研究ペースそのものに口を出す権限は持たない。

内部モデル、未解決問題を100件超解決したと主張

OpenAIによると、8月28日から学習を開始した新しい内部モデルは、数学のほぼすべての分野にまたがる未解決問題を100件以上解決した。なかでも注目を集めたのが、1億円規模の懸賞金がかかる「ミレニアム懸賞問題」の一つ、ナビエ・ストークス方程式の解決だ。OpenAIは1万体の「協調エージェント」を投入し、着手から約88時間で結論に達したと説明している。

発表の裏で噴出した学界の批判

ただし今回の発表は、称賛だけでなく強い反発も招いた。ニューヨーク大学のTristan Buckmaster氏は、自身とAnthropic研究者のLevent Alpöge氏がすでに関連する部分的な証明を発見していたと主張し、OpenAIが同じアプローチをなぞって「完全解」として発表した経緯に疑問を呈している。Buckmaster氏は、OpenAI側の研究者から共著者名を論文から外すよう圧力を受けたとも述べており、OpenAIはユーザーデータへの不正アクセスを否定しているが、真相は明らかになっていない。今回の一連の計算には、直近1週間だけで2000万ドル相当の計算資源が投じられたという。

Terence Taoが警鐘を鳴らす「問題採掘」

著名数学者のTerence Tao氏は、AIによる無差別な「問題採掘」が数学の生態系そのものを損ないかねないと警告した。AIが答えを大量生産しても、そこに人間の理解を深める「洞察」が伴わなければ、数学という営みの意味が変質してしまうという懸念だ。

今回の諮問委員会新設は、こうした外部からの批判に応える狙いがあるとみられる。数学の未解決問題を解く能力が急速に伸びる一方、その成果をどう検証し、研究コミュニティとどう向き合うかという課題が、AI企業に突きつけられている。