OpenAI、ロシア発の偽シンクタンクによるChatGPT悪用の影響工作を摘発
OpenAIはロシア発とみられるChatGPTアカウント群を停止したと発表。イスラエル拠点を装う架空シンクタンクを通じ、盗用記事とロシア礼賛の「主権指数」で西側批判を展開していた。
OpenAIは、ロシア発とみられるChatGPTアカウント群を摘発し、これを停止したと発表した。工作の中心には、イスラエル拠点の「専門家コミュニティ」を自称する架空のシンクタンク「International Burke Institute(IBI)」があり、盗用した学術記事とロシアを好意的に評価する独自の「主権指数」を組み合わせて、西側諸国批判の世論工作を展開していた。
VPN経由でロシアから接続、痕跡を隠す指示
OpenAIによると、工作の実行者はロシア語でChatGPTにプロンプトを入力し、Substack・Telegram・X・Facebook・LinkedInに投稿するための英語のコメントを大量に生成させていた。OpenAIはロシアからのアクセスを許可していないため、実行者はVPNを使ってプラットフォームに接続し、ロシア出身であることを示す言語的な手がかりを隠すようChatGPTに指示していたという。
生成されたコンテンツの多くはIBIのウェブサイトへの誘導が目的で、IBI名義のアカウントだけでなく、一般ユーザーを装った(実際は工作用とみられる)アカウントからも投稿されていた。ドイツ語圏向けには「Lahme Ente(死に体のアヒル)」という名のTelegramチャンネルで、ウクライナ・EU・ドイツ政府を批判し対ロシア関係の改善を訴える投稿も確認されている。
記事の94%が盗用、著名研究者になりすまし
IBIのウェブサイトは2025年2月に登録され、2025年9月から2026年5月にかけて公開された記事のうち、サンプル調査した36本中34本(94%)が他サイトからの盗用だったとOpenAIは指摘する。フランシス・フクヤマやノーム・チョムスキーといった著名な識者の名を掲げつつ、実際の記事はケンブリッジ大学出版局や移民政策研究所(Migration Policy Institute)の論文を、無関係な専門家の名前で誤って帰属させたものだったという。
サイトはさらに、独自の「主権指数」に基づき各国を評価する記事群を展開していた。フランス・ドイツ・EU・アメリカを対象に、いずれも西側の政策を厳しく批判し、ロシアとの関係改善を促す論調で統一されていた。
過去の類似工作より「手が込んでいる」
THE DECODERの報道によれば、OpenAIは2024年6月の「Bad Grammar」や2025年の「Operation Helgoland Bite」など、過去にもロシア関連の情報工作を摘発してきた。今回のIBIキャンペーンは、Brookings研究所の「Breakout Scale」(影響工作の深刻度を6段階で評価する指標)で3と評価され、リーチ自体はTelegramチャンネルあたり1万~2万フォロワー程度と限定的だった。
ただしOpenAIは、架空シンクタンクの構築・盗用記事による信頼性の偽装・独自指標の考案という手の込んだ設計を「ウクライナ侵攻以降に摘発してきたロシア関連の工作の中でも、これほど手の込んだものは初めて」と位置づけている。リーチが小さいうちに摘発されたものの、インフラ自体は今後拡張されうるとOpenAIは警告しており、AIサービスを悪用した偽情報工作が、より巧妙化しながら継続していることを示す事例といえる。