Googleは、法律事務所や企業法務部門向けに特化したAIエージェント基盤「Gemini Enterprise for Legal」を発表した。契約書のレビューや法務調査といった業務を、既存の法務システムと連携させながら自動化する。現在はプレビュー提供中で、Cleary GottliebやFreshfields、Weil、Williams & Connollyといった大手法律事務所が導入企業として名を連ねている。

契約レビューから規制動向の追跡まで4つの構成要素

Google Cloud CEOのトーマス・クリアン氏によると、Gemini Enterprise for Legalは4つの要素で構成される。法務向けに設計された「契約レビュー・赤入れ」「プレイブック作成」「規制リスク調査」「DSAR(データ主体アクセス要求)対応」などのスキル群、権限管理を引き継いだ既存システムとの安全な連携、Google製の事前構築済みエージェント、そしてサードパーティを含むパートナーエコシステムの4つだ。

連携先にはiManageやNetDocumentsといった文書管理システム、DocuSignなどの契約管理ツール、EverlawやRelativityOneといった証拠開示システム、Thomson Reuters HighQなどの法務リサーチツールが並ぶ。法務特化AIのHarveyや、特許・先行技術調査のSolve Intelligenceといった専門AIサービスとも接続する。導入パートナーにはDeloitteをはじめ、Accenture・KPMGなどの大手コンサルティングファームが名を連ね、契約要約などのタスク向けに構築済みのAIエージェントを提供する。

モデル自体はAnthropicの法務ソリューションと同一路線

THE DECODERの報道によれば、Anthropicもすでに同様のプラグインベースの法務ソリューションを提供している。両社の違いは基盤モデルではなく、「スキル」と呼ばれる実行可能な事前構築プロンプトと、データソースとの接続方法にある。GoogleはMCP(Model Context Protocol)コネクタを通じて既存システムとの統合を実現しており、組織ごとのデータ隔離やロールベースのアクセス制御、Google基盤モデルの学習・ファインチューニングへの非使用など、エンタープライズ向けのガバナンス要件を満たす設計とした。

業界特化型AIの第一弾、金融サービスも同時展開

GoogleはGemini Enterprise for Legalを、業界特化型ソリューション群の第一弾と位置づけている。同時に金融サービス向けの専用版も展開しており、今後も特定業界向けにカスタマイズしたエージェント基盤を拡充していく方針とみられる。法務分野では契約レビューやDSAR対応など定型業務の自動化が長年の課題とされてきており、大手法律事務所が早期導入に踏み切ったことは、生成AIエージェントが専門職の実務フローに本格的に組み込まれ始めている一つの節目といえる。