Thomson Reutersが、OpenAIやAnthropicのAPIを使い続ける代わりに、独自の基盤モデル「Thomson」の開発に約4000万ドルを投じたことを明らかにした。専有する法律・税務データに限定した評価では、汎用モデルであるGPT-5.4を上回る精度を出しているという。

Qwenをベースに専門家チームで調整

ThomsonはアリババのオープンソースモデルQwen3.5-397Bを土台にしている。同社はまずインペリアル・カレッジ・ロンドンと協力し、安全性と倫理面を調整した中間モデル「Snowdon」を構築。そのうえでWestlaw、Practical Law、Checkpointといった同社が持つ数十年分の専門コンテンツを事前学習に用い、ドメイン専門家によるファインチューニングと強化学習を重ねた。CTOのジョエル・ホロン氏は、基盤モデルの選定を約6回変更したと明かしている。

現時点で学習に使われているのは、Thomson Reutersが保有するコンテンツ全体の10%未満にとどまる。今後さらに独自データを投入する余地が大きいことを意味する。

ベンチマークでは分野限定の強み

法律分野のベンチマーク「Stanford LegalBench」では、Thomson単体の性能はGemini 3.1やGPT-5.5に及ばない。ただし、同社の専有コンテンツへのアクセスを組み合わせた場合に限り、GPT-5.4を上回る結果を示したという。これは、汎用の大規模モデルの地力そのものではなく、独自データとの掛け合わせによって専門領域での優位性を作る戦略であることを示している。

「借りる」から「持つ」への転換

Thomson Reutersはまず契約書レビュー機能を持つ「CoCounsel Legal」にThomsonを組み込む計画で、小規模版はHugging Face上で非商用ライセスとして公開する予定だ。独自モデルを持つことで、外部API利用に伴う推論コストの削減、特定ベンダーへの依存回避、そして自社データを使った継続的な学習効果という3つの利点が得られるとしている。

大手コンテンツ企業がOpenAIやAnthropicの汎用モデルを「借りる」のではなく、自社データを核にした専用モデルを「持つ」方向に舵を切った事例として注目される。専有データを大量に持つ業界(法律・金融・医療など)の企業にとって、同様の選択肢を検討する材料になりそうだ。